過去の米政権は中国の台頭を許した、トランプの政策が招くのは?

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南シナ海からインド洋、そしてアフリカ大陸まで、米国が長年にわたって優位性を維持してきたこれらの地域で、中国は急速に力を強めている。

これは、投資家たちが注意深く見守っていかなければならない問題だ。世界の2大経済国間の緊張が地政学的リスクを高め、影響は貿易以外の分野にも広がり始めている。

中国の台頭は、偶然によって起きたことではない。米国のシンクタンク、外交問題評議会(CFR)の報告書によれば、中国は過去の米政権の好意に助けられ、系統的に台頭してきたのだ。そのおかげで中国は、壮大な戦略を立て、実行することができた。

報告書はまた、ビル・クリントンからジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマまでの3人の大統領が率いた米政権は、幾つかの点で中国の戦略的意図を読み誤っていたと指摘する。それぞれの政権はそのために、中国との関係を楽観視していたという。

これらの大統領の任期に当たる20年の間に立てた戦略を、中国は近平国家主席の下で実行に移した。それには、以下が含まれている。

・地理経済(地経)学的な手段を用い、近隣国やその他の国を抑圧。最近の例として挙げられるのが、「一帯一路構想(BRI)」

・国際商慣習に反した行動を取る。例えば、米国から多くの知的財産を盗んできた

・貿易で優位に立つため、為替を操作する

・台湾を脅す

・ 日本やフィリピンを超えた海上で、軍事力を増強する

・国際法に違反し、南シナ海に軍事拠点として人工島を建設する

──そして中国はアジアで最大の力を持つ国として米国に挑むという戦略的目標を掲げ、忍耐強く、着実に、その力と影響力を増してきた。

米シンクタンク、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のイーリー・ラトナーは以前、フォーリン・アフェアーズ誌への寄稿で次のように述べた。

「米国は中国に対し、中国が今後も侵略を続けるのであれば、米国は中立の立場を放棄して域内諸国の主張を支持すると警告し、それによって外交における抑止力を強化すべきだ。米政府はアジア地域における不安定なこう着状態は容認できるが、中国が覇権を握ることは認められないということを明確にするべきだ」
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編集=木内涼子

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