街の中心部にあるというその立地から、新店舗は従来よりも小規模なものとなっている。同社はこれについて開店時、顧客へのリーチを拡大するための「よりアクセスが良く、よりパーソナライズされた新たな手法」の一例だと説明している。
新店舗が入居する地上2階、地下1階の建物には、以前はカジュアル衣料のアーバンアウトフィッターズが入っていた。向かい側には、百貨店ブルーミングデールズの旗艦店がある。平日でも、客足は途切れることがない。
プランニング・スタジオでは、イケアが面積37平方メートルほどのアパートや約31平方メートルのバスタブ付きの部屋をどのようにコーディネートするかなどを参考にすることができる。地下には予約した人を対象に、無料でレイアウトに関する相談に応じるスペースもある。
ただし、例えば顧客が店内にある9.99ドル(約1000円)のシャワーカーテンや4.99ドルの物干しハンガーが欲しいと思っても、残念ながらこの店で購入することはできない。買い物をしたい場合は、従来からある大型店舗まで行くか、オンラインで注文し、料金を払って配送してもらう必要がある。
アマゾンやウォルマート、その他の小売業者が配送料無料で競い合う中、イケアのウェブサイトによれば、同社は最低9.99ドルの配送料を徴収している。また、新店舗にはスウェーデン料理を提供するレストランもない。
売上高の増加につながるか
大規模小売店を展開してきた大手ターゲットなど、その他の競合各社も戦略として採用し始めている小規模店のコンセプトで、イケアはより多くの都市部の消費者を引き付けたい考えだ。この新店舗によって、オンライン販売の売上高を引き上げられる可能性もあるとみている。
イケアの年次報告書によると、2018年8月期(通期)の世界全体でのオンライン販売の売上高は、為替変動などを考慮しない実質ベースで前年比45%増加。同4.7%増となった小売全体での売上高の伸びを大きく上回っている。
だが、一方で同社はこれまでのところ、オンライン販売では競合する各社に後れを取っている。例えば、米調査会社ラクテン・インテリジェンスによれば、今年3月までの1年間にオンライン販売を通じて米国で購入されたベッドとマットレスの売上高のうち、イケアが販売した商品の売り上げが占める割合はわずか1.6%だった。
アマゾンが(同社サイトを通じた販売の合計で)32%を占めているほか、コストコとウォルマートの割合は、それぞれ4.3%、3.2%だった。
既存店とは異なる効果に期待
都市部での生活や狭い住居スペースに焦点を当てた新たな業態のプランニング・スタジオについてイケアは、「顧客に商品を見つけ、選び、注文する機会」を提供するものになると見込んでいる。
同社の売上高全体に占める割合がドイツに次いで2番目に大きい米国で、その他の主要都市にも同じ形態の店舗を開業していく計画だ。ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、ワシントンDCなどでの出店を予定している。
また、同社によれば、プランニング・スタジオは時間に追われる消費者を顧客として取り込み、売り上げを伸ばすための賢明な方法であると同時に、ニューヨーカーたちの意見を取り入れた店舗でもある。
同社が今後、「すぐに得られる喜び」や「衝動買い」につながるという実店舗の重要な役割を事業に反映させていく上でも、効果的な店舗になるかもしれない。