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2019.05.31

眠った遊休林を「遊び場」に フォレストアドベンチャーの挑戦

地方自治体や地域企業から声がかかり、日本全国に30施設を超える。

「我々は森を使わせてもらっている。樹木が朽ちたらこの事業も終わり。できる限りそのままの森を残した状態を保ち、多くの人に森を見るきっかけを提供したい」

そう語るのは、自然共生型アウトドアパーク「フォレストアドベンチャー」を運営する金丸一郎社長だ。

フォレストアドベンチャーは、森林の中で、木から木に空中を移動して遊ぶアウトドアパーク。自分の力で樹木の幹に取り付けられたプラットフォームに登り、安全のためハーネスを装着し、木から一気にすべり降りる「ジップスライド」など、多彩なアトラクションを楽しめる。




樹木への負担を最小限にし、森林をそのまま活用しているのが最大の特徴で、ユーザーは地上5m~15mを移動するため、恐怖心が煽られる心地よさがある。まさに、アドベンチャーだ。フランスのアルタス社と業務提携を実施し、日本では、2006年に初めて富士山麓に「フォレストアドベンチャー・フジ」を開設。その後、北海道から沖縄県まで、全国30施設以上に拡大している。

日本は、先進国の中でも森林大国だ。日本国土の約66%が森林で、森林率は先進国のなかではフィンランドに次ぐ2位である。森林は、自然の力で生まれ育った「天然林」と、人の手で植え育てられた「人工林」に二分され、天然林の方がやや多いが、その比率はほぼ1:1。人工林の約9割は、スギ、ヒノキに代表される針葉樹林。生長が早く建築資材等に利用できるため、高度成長期に大量に植林された。

現在、課題になっているのは、かつて植林されたが放置されている人工林だ。人工林は、人の手で整備をしないと荒廃していってしまう。


2512万haの森林のほぼ半分(約1300万ha)が天然林。
約4割の1000万haが人工林である

林業とはビジネス観点で捉えると、我々が思っている以上に時間軸が長い。植林した森林がお金に代わるのは孫の世代である。しかし、安価な輸入材の影響や木造建築の減少により国産材のニーズは低下。そのため、人工林を維持管理できずにい放置するケースや、どうしていいか頭を悩ませている地域が急増している。そんな放置された遊休林の新たな活用に商機を見出したのが金丸氏だ。

日本でも受け入れられると確信した

フランス在住の友人からフォレストアドベンチャーの話を聞いた金丸氏は、友人に呼ばれて実際に訪れた際に感銘を受け、「日本でも十分に受け入れられる」と可能性を感じた。当時、フォレストアドベンチャーはフランス国内で急成長しており、その数は10年間で300施設を超えていた。

日本国内の誘致を決意するも、前例がない。関東周辺で、森林のある市町村に飛び込みセールスを繰り返した。その時、具体的に話が進展したのが富士河口湖町役場を訪問した時だった。

建築資材用にカラマツを植えていたが、荒れ放題の森林が鳴沢村にあるという紹介を受けた。その場所は、山梨県の県有林を、地元有志の耕地整理組合が賃借していた場所である。カラマツ植林後、木材価格下落と林業後継者難により遊休林と化していた。周囲の森林も、ゴルフ場や別荘地に様変わりしていた中、どうするか検討していた。

この森林を管理する理組長に、フォレストアドベンチャーの話が入った。「森林をそのままに、子供たちに自然を体験してもらえる。今時なかなかないことだ」とコンセプトに共感し、導入することが決まった。施工・設営できる知見が国内にはまだなかったため、フランスのアルタス社と連携を図り、フランスからのサポートを仰ぎオープンまでたどり着いた。

オープンは2006年8月。収益の一部を森林整備費にあてることで、今では持続可能な森林管理のモデルとなっている。
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文=内田有映

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