マララいわく、自分の声を育て、勇気づけてくれたのは父親のジアウディンだった。「私の父が、私の声には力があると気づかせてくれました」。マララは父の著書『Let Her Fly(彼女を飛び立たせる)』の前書きでこう記している。「私はどう物語を語るか、どう声を上げるかを知っていました」
私はアブダビで最近開かれた国際書籍見本市で、本好きな人々と地域の学校の子どもたちに向けた講演を依頼され、そこでジアウディンと話す機会があった。ジアウディンによれば、勇敢で変化をもたらすリーダーになるには誰であれコミュニケーションスキルの習得が「必須」であり、その習得は幼少期の家庭環境から始まるのだという。
ユスフザイ家は数世代に渡る語り部や演説家の家系だ。マララの父方の祖父は「熱烈な」演説家かつ宗教学者で、その演説は遠方から多くの人々を集めた。ジアウディンは父のような名演説家になりたかったが、4歳で言語障害を発症したという。そんなジアウディンに対し、父は弱みを強みに変え、演説の練習をするよう励ました。
パキスタンの学校では公式スピーチ大会があり、ジアウディンは13歳で参加し、何時間も繰り返し練習を重ねて完璧なスピーチを行った。この経験は自信につながり、特に先生から「君は炎を広げた」とささやかれたことは大きな励みとなった。
「後に私のスピーチはタリバンに対する武器となった」とジアウディンは回想する。「言葉は流ちょうではなかったかもしれないが、私は真実を話した」。教育への愛と演説への情熱は、娘のマララに引き継がれた。ジアウディンは、娘が自分の得た世界的な名声を扱うやり方に感心し、感銘を受けているという。マララは明快かつ明瞭で、情緒豊かだ。また世界のリーダーたちの前で演説する時ですら、驚くほど落ち着きを保っている。