ルパートは、南アフリカでのローカルなものづくりと、徹底したトレーサビリティこそオカピブランドが真にラグジュアリーである所以だという。自然保護に関するこだわりも強く、材料は主に副産物を使用。主要商品であるショルダーバッグは470〜2240ポンド(約7〜33万円)、ワニ革を使った限定品は8000ポンド(約117万円)で、現在オンラインショップ上では売切れとなっている。
オカピの特徴は、ブランドとしてエシカルであることを重要視していること。「ファッションは時代を表す鏡。人口過剰、過剰消費、莫大な情報といったような課題に直面する今、人々はシンプルな選択肢に回帰しようとしています。ワードローブをシンプルにするというのは最も有効なことだと思います」とルパートは言う。
ケープタウンのブティック「Merchants on Long」
スケーラブルなラグジュアリー
南アフリカを代表するもう一つのラグジュアリー・ブランドがマコサ。デザイナーのラデュマ・ノゴロが2010年に立ち上げたファッションブランドだ。自らのルーツである南アフリカのコサ族の文化に注目し、伝統的なビーズ工芸のモチーフを活用した幾何学的な模様のニット製品を中心に、アパレル商品を展開する。メインとなるセーターやカーディガンは、3600〜5400ランド(約3〜4万円)。ニットドレスは、9600ランド(約7万円)。
母親がリサイクルショップでたまたま入手した家庭用編み機がニットブランド立ち上げの背景にあったというノゴロ。現在は以前の取引先であったニット工場を買収し、数台のニットマシンを稼働させている。ヨハネスブルグにある工場には筆者も訪問したことがあるが、前述のメンケスも今回ラデュマの工場を訪問し、アフリカのものづくりにおける工業化された側面も目の当たりにしたようだ。
Condé Nast International Luxury Conferenceに登壇したスージー・メンケス(左)とラデュマ・ノゴロ(c)コンデナスト社
中国の賃金高騰に伴い、アパレル企業が次なる「世界の工場」を模索するなか、エチオピアなどアフリカ大陸にも注目が集まっている。ファストファッションは繁栄する一方で、ミレニアル世代を中心に、地球環境への負荷が少ないものづくりやこだわりのストーリーが重視されるような「スロー・ファッション」への意識は高まりつつある。
アフリカのものづくり産業の繁栄には、オカピのようなハンドメイドに特化した高級ブランドと、ラデュマのようにある程度工業化したプロセスによりスケールできるようなブランドのどちらも必要だ。いずれにしても、これからのブランドは、いかに人間味(human touch)を内包し、維持できるかがカギであり、アフリカ発のラグジュアリーの本質もそこにヒントがあるのかもしれない。
連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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