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アメリカで展開されるオポチュニティ・ファンド(Oファンド)に似ているのが、日本でも一部の自治体で始まったソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)だろう。日本でのパイロット事業第一号は、横須賀市が2015年に行った特別養子縁組の推進支援である。児童養護施設は虐待などに遭った子どもでパンク状態になっており、入所者は2年間で100件増というペースだった。職員一人が見る子どもの数が増えすぎると、成育環境として好ましくない。

そこで民間から募る資金を使い、SIBを組成。年間4人の特別養子縁組が成立した場合、行政収支が約1700万円改善されるモデルを組み立てた。成果目標を達成すると、行政が出資者に成功報酬を支払う仕組みだ。

SIBがワンテーマなのに対して、Oファンドは課題が「地域」と広い。成果は雇用や地域貢献なので計測も難しいだろう。しかし、町を蘇らせるのだから、社会へのインパクトはSIBよりも大きい。IPOで得た巨万の富やキャピタルゲインをOファンドにまわせば、社会は大きく好循環する可能性がある。

町づくりに投資のロジックを取り入れる発想は、これまで日本にはほとんどなかった。「官」が行うと考えられていたからだ。投資のロジックを取り入れる際に必要なのが、認証システムやレイティングなどの指標だ。

「ワシントンDCやニュージャージー州のニューアークなどでは、自治体を評価するLEED for Citiesが採用されています」と言うのは、日本でLEEDの認証を行う一般社団法人グリーンビルディングジャパンの平松宏城共同代表理事である。

LEEDとは米非営利団体USGBCが開発した都市や建築の環境性能評価システムで、Leadership in Energy & Environmental Designの略称だ。住民の健康や経済状況、水や廃棄物など環境に関して、持続可能性を高めるための都市の現状を評価する指標である。

「雇用を創出しても、家賃が上昇してしまえば、地元住民が住みづらくなります。そのように多様性が損なわるところまでLEEDは評価します」(平松共同代表)

アマゾンが第二本社をニューヨーク市のクイーンズ地区に移転しようと計画したところ、地元住民が高所得者の流入による家賃の急騰を危惧。地元で反対運動が起きてアマゾンが計画を撤回したように、単に雇用が増えればいいというわけではない。

LEEDを用いた投資は「ESG投資の不動産版」と考えればわかりやすいだろう。

「荒んだ都市を公共サービスだけに任せても、何も変わりません。民間のノウハウを使って、どんなことを行うと町の再生に効果的か。何を目指すかはみんなが賛同した評価軸を使う。日本でも二子玉川の商業施設や千葉県柏市の柏の葉スマートシティなどLEEDの認証を取得する施設が増えてきています」(同)

イグジットは、「地域全員の幸せ」と言えるかもしれない。

文=フォーブスジャパン編集部

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