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成功の鍵は「コミュニティ」

もう一つの要因としてウェッブが強調するのが、「コミュニティ作り」だ。

ウェッブは、「質の高いジャーナリズムに投資をするのは非常にお金がかかり、なんとかしてビジネスモデルを探さなければならない。簡単な答えはないと思います」とした上で、「人々に、自分たちがこの良質なジャーナリズムを支えている、と思ってもらうことが大切です」と語る。ある読者は「スロージャーナリズムは宗教で、DGはその聖書だ」と評していたそうだ。

「スロージャーナリズムをビジネスとして継続させるには、広告マーケットの中に飛び込むよりも、自分たちを支えてくれる読者のコミュニティを形成し、そこで報道を追求するのが一番良い方法じゃないかと思います。マネタイズを目的とした広告業界の中では、あれやこれやの様々なプレッシャーや制約があります。もちろん何も工夫をしないでそれらを両立させられるとは思わないですが」

コミュニティづくりの手段は様々だ。DGでは、ジャーナリズムやインフォグラフィックス制作を学べる教室イベントを開催しており、取材を担当したジャーナリストとのトークイベントなども行なっている。購読者の紹介で購読料が半額になるサービスプランも用意しており、ウェッブはこうしたコミュニティを「会員制のクラブのようなもの」と表現する。

読者は20~40代の女性が多く、SNS上でニュースを得るメリットとデメリットを理解している人が多いという。イベントには、ジャーナリスト志望の若い男女や、デザイナーやイラストレーターたちが参加しているそう。

コミュニティ形成には、細部に至るブランディングが欠かせない。

マガジンの紙には、コーティングを施していないオーガニックな再生紙を使用している。

「結構なお金を払って購読してくれているので、見た目も良くて、その人がずっと持っていたいようなものを作ってあげたい。人々に読んでほしいなら、『何か特別なもの』に投資をすることは重要です。僕たちよりも多くの購読者を抱えるメディアはたくさんある。その中で存在感を発揮するには、マガジンの品質は絶対に落とせません」

ネットで紙の購読者を増やす

ウェッブは、良質なコンテンツを提供できていることには手応えを感じつつも、「マーケティングに関してはまだグレートじゃない。色々な人に知ってもらうためのプロモーションができていない」と課題を認識しており、意外なことに「そのためにはネットももちろん必要」と口にする。

文=鷲見洋之

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