「民俗学2.0」でAI時代を読む


『般若心経』を説くアンドロイド

さて、そろそろ、「アンドロイド観音 マインダー」を拝観することにしよう。

マインダーが安置されている高台寺は、豊臣秀吉の正室・北政所ねねが、秀吉の冥福を祈るため建立したことで知られる寺院である。この寺の境内の一隅、教化ホールという建物に立つアンドロイド観音は高さは約1.95メートル(台座を含む)、幅約90センチ、顔から胸の一部と腕の先は、人を模したシリコン製だが、頭部と胴体は機械がむき出しになっている。



マインダーは高台寺の後藤典生前執事長が、「多くの人に仏教への興味をもってもらいたい」と考え、ロボット研究者でアンドロイド開発者としての知られる大阪大学の石黒浩教授の研究室などと協力して製作された。

教化ホールでは、1日に数回『アンドロイド観音 マインダー 般若心経を語る』という約25分間の法話がおこなわれ、これに参加すると、アンドロイド観音の製作理由と開発の意義がおのずと見えてくる。

法話がはじまると、マインダーは合掌したり手を広げたり、首を振ったりしながら、四方の壁にプロジェクションマッピングで映し出された人びとの問いかけに答える。インバウンドに対応するため、英中2か国語の字幕も投影される。

法話で語られる『般若心経』(『摩訶般若波羅蜜多心経』)は、262文字のなかに仏の教えが説き明かされ、煩悩にまみれた人びとが“心の安らぎ(安心)”を得るための方法が示されている。

マインダ―は法話の参加者に対して、「自分へのこだわりなどないアンドロイドは、現代においてお釈迦様の教えを実行できているのではないだろうか」「しかし、相手に共感する心はロボットには持ち得ない。人間であるあなたたちだけに備わる力だ」などと身振り手振りを交えながら語っていく。

女性的な語りによるマインダ―の法話はわかりやすく、ある種の“メディアパフォーマンス”としてじゅうぶん楽しめた。また些末なことだが、プロジェクションマッピングに登場する煩悩まみれの人びとが、関西方言のアクセントで話すところに、京都の寺院らしい親しみが感じられた。

文・写真=畑中章宏

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