東京からの観光客は20%増
仕掛けはアートだけではない。志賀直哉に限らず、城崎温泉には多くの作家が訪れてきた。島崎藤村、与謝野晶子、司馬遼太郎……。この歴史的事実を活用した企画が、城崎温泉旅館経営研究会による出版レーベルの発足である。
最近、本といえば、インターネットで購入したり、電子書籍で読むようになったりと大きく文化が変わった。そこで考案された仕掛けが、城崎温泉に足を運ばないと買えない「土産本」だ。
下の写真を見てほしい。
城崎温泉を舞台にした「土産本」
ベストセラー作家、湊かなえの書き下ろし小説『城崎へかえる』は、カニの殻から身を出すようにして小説を「味わう」。同じく書き下ろしである、万城目学の『城崎裁判』はブックカバーがタオル。温泉で読めるように、中身の本は耐水性が高い紙になっている。
そして、志賀直哉来湯100年を記念してつくられた『注釈・城の崎にて』という詳細な注釈が一冊おまけでついた志賀直哉の『城の崎にて』。これら土産本を購入するため、城崎温泉を訪れるファンは増え、東京からの客が20%増となった。
温泉街では「NOMOベースボールクラブ」の選手たちが働き、社会人野球を続ける。そして、国際的なパフォーミングアーツの町に変貌した豊岡に、2021年、演劇とダンスが学べる初の公立専門職大学が開学する。
面白いことを考えるのにカネはかからない。アイデアが人を呼び、面白いところに人は集まるのだ。