ビジネス

2019.05.27

NEO地方創生 世界のイノベーターを生む「一社一村運動」とは

ストライプインターナショナルの石川康晴社長


では、そうした「一社一村」の地方創生をどう実現させていけばいいのだろうか。そのためには「官民一体の取り組みが必要だ」とは、昔からお題目のように言われる言葉であるのだが、石川はより抜本的な解決を提案する。「『一社一村』を実現するのは教育の力です」

民間の力によって、大学が手の届かないところまでサポートし、その教育プログラムを受けた生徒達の中から、地方に本社を置きつつ全国や世界にスケールを広げていくような人たちが出てくることを目指すと言うのだ。

そのための教育プログラムがSiEEDである。SiEEDとはSTRIPE Intra & Entrepreneurship Empowerment and Developmentを意味し、この春に岡山大学とストライプインターナショナルがパートナーシップを組み、創設された起業家精神養成講座だ。

さる4月6日に岡山大学の金光ホールにて、多くのマスコミや地元岡山の財界人や学生たちが集う中、オープニングカンファレンスが行われた。



プログラムのタイトルのSiEEDには、イントレプレナーシップ(社内起業家精神)とアントレプレナーシップ(起業家精神)という二つのキーワードが入っているが “イントレ”というのが、“アントレ”よりもむしろ大事だと石川は言う。

「アントレ=“起業家”は起爆剤のようなもので、一瞬で地域をよくする可能性があると思いますが、もう一方でイントレ=“組織内改革者”の存在も地域を良くすると言えると思うのです。なぜなら既存の企業が一気に全て新しい企業に入れ替わることはないからです。地域が持続的に成長するためには既存の企業自体が変わっていくことの方が大切で、そのためにはイントレが必要なのです。

例えば市役所や県庁の中で部長や局長と戦いながら改革する人たちや、大学において異端児のような存在で改革をしている教授などが実は地域を変えるのです。ですから起業家を何人つくって、何社をIPOさせるかというところにこのプログラムのゴールはありません。新しい技術を使って見たことのないものを作り出すようなイノベーターである社会改革者、そして、例えば新聞社がレストランを始めるとか、それくらいの経営改革を打って出るような組織内改革者をつくりたいのです。地域の大企業や地域の行政に改革者がいるかどうかが『一社一村運動』の鍵を握っています」

石川は地方都市である岡山で育ち、起業したことが会社をスケールさせるきっかけになったとも語る。

「東京はマーケティングでいうとニッチであり、東京で起こっていることが残りの46都道府県に当てはまるわけではないのです。一方で、岡山や静岡や愛媛は標準都市に近い感覚があります。実際に、例えばカルビーのマーケティングでは、静岡などでテスト販売して売れたものを全国展開していく流れがあります。岡山で起業し、標準都市から見える景色をずっと観てきたことが、大局的に世界を観ることにつながりました。また、世界が便利でテクノロジー化されてきていて人々は逆のことを求め始めてきていると考えます。人々は自然の豊かさや心の豊かさを求め、地方に興味を持ち始めています。この流れは先進国全てに言えるのです」 

地方から世界を変える。こう断言する石川。講座初日は立見の出るほどの盛況で始まった。あなたの周囲にも「一社一村」になる企業がきっとあるはずだ。

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