電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」

イラストレーション=尾黒ケンジ

アイデア力に自信がある人でも思考が偏ったり、バイアスがかかってしまいがち。それを打破できるのが「マイ賢者」。SNSでのちょっとしたつぶやきが、身近な人の意外な顔が、あなたの創造性を高めてくれるかも。


新しいアイデアを発想するとき、着想のヒントをくれる「賢者」のような存在がいたら……。著名な経営者や政治家の専売特許のように思われがちなこの存在が、工夫次第で誰でも持てるようになるかもしれない。いってみれば「マイ賢者」。その萌芽が、若い人たちの日常から見えてきます。

漢方を現代の女の子にライフスタイルとして提案しているブランド「DAYLILY」。私の元同僚の小林百絵さんが始めたスタートアップですが、そのきっかけは大学時代、もともと知人だった王怡テイさんの漢方に関する修士論文制作を手伝ったこと。漢方の奥深さや可能性に魅せられた小林さんが王さんに起業を持ちかけ、DAYLILYは始まりました。王さんという、いわばマイ「漢方の賢者」が身近にいたことで新たな価値が生まれたわけです。

私が所属する電通若者研究部では社会と学生の共創プラットフォーム「βutterfly」という取り組みをしており、そこでのワークショップで大学生の皆さんが出した「やりたいことのかなえ方」の未来の仮説からもその兆しは見られます。「とりあえずYouTubeで宣言」「Twitterで目標を発信」「polcaで支援を募る」などなど、他者に告げることから始めようというものがとても多かった。

自分だけでなんとかしようとせず、かといって他人に丸投げして自分で努力しないわけでもない。いわば「積極的他力本願」。すでにアテにしている誰かだけでなく、思いもよらない「マイ賢者」の偶然の発見も期待しつつ、個人版オープンイノベーションを実践しているわけです。

大企業の若手有志団体のコミュニティ「ONEJAPAN」も、業界や専門性を超えた交流によってお互いを「マイ賢者」にしあっています。企業同士のやり取りの多くを占める「目的ありきのつながり」では生まれにくい、「つながりから始まる新たな“目的の発見”」が創出され、メンバーの一人として私自身も、このつながりが日ごろのあらゆる業務のアイデアの価値を2割増しにしてくれている感触があります。

このように、自分の興味関心トピックそれぞれに「マイ賢者」を自覚的に持っておくことで、効率や創造性が高まります。例えば、マイ「コーヒーの賢者」は職場のAさん。マイ「地方移住の賢者」は大学時代の友人Bさん。マイ「写真の賢者」は隣に住むCさん……。

自分の脳の中に頼れる知人が居並んでいるイメージを持つことで、問題解決のスピードは格段にあがります。直接聞いてしまうのもよし。「彼ならどう考えるだろうか」と自分の思い込みを外すための指標にしてもよし。実際に巻き込んで一緒に進めるのももちろん有効です。

文=吉田将英 イラストレーション=尾黒ケンジ

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