自分のバイアスを他力本願で突破する「マイ賢者」発想法

イラストレーション=尾黒ケンジ


若い人たちの仮説や行動が示す通り、テクノロジーやツールの発展によって他者との距離や関係性を縮めやすくなり、ラフな問いを広範に投げかけられるようになりました。また、「そこまで親密じゃない」「最近あまり会っていない」知人に対しても、軽やかに連絡を取れるようになったことも「マイ賢者」を活用しやすくなった背景かもしれません。

「マイ賢者」の効き目は情報収集だけではありません。例えば、自分ひとりで考えているときに陥りやすい「盲点」「バイアス」を打破してくれる効果。また、人に聞いたほうがほどよく「ノイズ」が入り、それが思いもよらない発想のジャンプにつながることも。

かつてシュンペーターがイノベーションを定義づけた「新結合」が、情報収集に好ましい雑味が入ることで起きやすくなる感じ。加えて、生み出された瞬間にすでに「関係者・応援者」がいる状態になるので、実現意欲を高めて取り組むことができます。

どうやったら「マイ賢者」を持てるのか。それは「普段の知り合いの、『知らない顔』に目を向ける」ことから始まるかもしれません。「賢者」というと、社会的に名の通ったすごい人をイメージしがちですが、「マイ賢者」の場合は、世の中ではなく「自分にとって」どうなのかが大事で、いつも接している身近な人にも可能性はあります。“会社の上司”としか見てないおじさんが「コーヒーの賢者」かもしれないし、“大学時代の同級生”としか見てない腐れ縁が「M&Aの賢者」かもしれない。

顕在化している関係性とは異なる「知らない顔」を見出すことが、「マイ賢者」を創るコツ。そのためには「雑談」がカギになります。もらった知恵がどう活きたのかを雑談で返すことで対話が生まれ、さらに知恵をもらいやすくなっていくはずです。

これまでのやり方が通用しない不確実な時代だと言われて久しいし、加えて時間と労力には限りがあり、可能性や選択肢の取捨選択が必要です。他方、レコメンドや最適化だけでは、「知らず知らずのうちに自分が見たいものだけを見ている」というフィルターバブルにはまり込んでしまう恐れも。そんな中、「自分の視野や思い付きの限界を戦略的に超える方法」を、若者たちは無意識に取り入れているのかもしれないのです。

日本企業がよく指摘されている「自前主義の弊害」に対して、「β版発想」「オープンイノベーション」などのアプローチが盛んですが、その個人版ともいえる知恵が、日々の創造性を上げてくれるかも。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

吉田将英◎電通Bチームゲスト。若い人との共創プロジェクトを通じてのコンセプト採集が得意領域。本業は経営者との未来共創プロジェクトのデザイン。新著『仕事と人生がうまく回り出すアンテナ力』(三笠書房)が4/3に発売予定。

文=吉田将英 イラストレーション=尾黒ケンジ

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