経済的には豊かなのにデータ上は「不幸」な国 日本が目指すべき幸せとは

ペンシルベニア大学 マーティン・セリグマン教授 ©︎ギブネスインターナショナル


幸福の定義はたくさんありますが、ここでは、私が研究を重ねてきたウェルビーイングを構成する「PERMA」について、お話します。

P=Pleasant Emotions (心地良い感情)
E= Engagement(エンゲージメント)
R= Relationships(人間関係)
M= Meaning& Purpose(人生の意味・意義と目的)
A=Accomplishment(達成感)

1つ目は「心地良い感情」。幸せ感、周囲に尊敬の気持ちを抱くなどのポジティブな感情のことをいいます。

2つ目は、「エンゲージメント」です。「フロー」や「ゾーンに入る」と表現されることもあります。何かに没頭したり、集中したりして時間の流れを忘れてしまうような体験のことを言います。

3つ目は、「人間関係」です。人間とは、仲間と群れる生き物であり、その仲間たちといかに支え合うことができるかがが幸福度を大きく左右します。

4つ目は、「人生の意味・意義と目的」です。 最近では「IKIGAI」と英語でもその意味が浸透してきた、生きる意味と目的です。

そして最後に「達成感」。人なら誰でも、ある目標を成し遂げた時、またそれに向かう過程でも幸せを感じるものです。

これらPERMAで構成される主観的ウェルビーイングの測定方法として、「人生に対する満足度尺度(Satisfaction With Life Scale、SWLS)」を用いることがあります。

ここで忘れてはいけないのは、同じ質問をしても、国ごとに異なる文化的背景から、その質問の受け取り方が大きく異なることがあるという事実です。

例えば、日本人はSWLSの質問のひとつ「ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い」という問いに1から10の度合いで答える際に、「10」を選ぶには、「自分自身の人生に何の不満もなく、満足している」と感じていなければならないと捉える人が多い傾向があります。

アメリカ人に聞くと、幸せを感じるハードルがそこまで高くありません。「ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い」を表す「10」を選ぶ人も全体の割合から見ても多くいます。

このように質問の捉え方によって、答えの基準にずれが生じる可能性があります。では、国ごとに一つの結果を比較することにどんな意味があるのでしょうか?

そこで私は、「DELTA PERMA SIGMA」という新しい基準を提案したいと思います。PERMAの前後にあるのはどちらもギリシャ語です。DELTAは「測定方法」を表し、SIGMAは「変化の量」を表します。

日本人は、幸せを感じる基準として何を重視するのかを決めるべきなのです。そしてそれは、「変化の量(SIGMA)」を測るために定量化できるデータでなければなりません。日本人独自の、幸せを感じる基準を設けるべきだと思うのです。

GDPなどの数値は確かにわかりやすい基準ではありますが、冒頭で述べたように経済状況だけでは人の幸せを測ることはできません。PERMAを構成する5つの要素と、定量化できる日本ならでは基準から、日本人がどう幸せでいられるかを考えるべきなのです。

世界標準の測定結果だけを見ると、残念ながら日本は幸せな国ではありません。しかし日本には、他の国にはない日本独自の持続的幸せを追求できる方法があるのではないでしょうか。

日本を幸せな国にするために、あなたはどんな基準を設けたいと思いますか?

構成=守屋美佳 写真提供・監修=Giveness International、加藤理絵、古市和子

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