「脱石油」目指す化学スタートアップ、米Solugenが35億円を調達

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米ヒューストン本拠の化学製造関連のスタートアップ「Solugen」は5月22日、3200万ドル(約35億円)のシリーズB資金調達の実施をアナウンスした。

同社の共同創業者のGaurab ChakrabartiとSean Huntらは、フォーブスの「30アンダー30」に選出された経歴を持ち、調達資金で製造設備を増強する。今回の出資はFounders Fundの主導によるもので、同社のパートナーのBrian SingermanがSolugenの役員に就任する。

さらに、今回の出資にはYコンビネータやWester Technology Investment、Refractor Capitalらも参加した。Solugenの累計資金調達額はこれで5500万ドルを突破した。

Solugenの主要プロダクトはヒューストンで長年製造されてきた過酸化水素だ。パルプの漂白や廃水処理に用いられる過酸化水素の製造は、石油由来の炭化水素を用いる従来のやり方では複雑で、危険なものだった。

同社は石油の代わりに、廃棄食品に含まれる植物中の糖質やCrisprゲノム編集を加えたバクテリアから取り出したエンザイム(酵素)を利用し、従来とは全く異なる方法で過酸化水素を製造している。

Solugenは自社で製造した過酸化水素を、石油やガス関連、水処理や農業分野で利用される別のプロダクトに使用している。同社の製造プロセスでは、有害物質が一切発生しない。さらに、同社が「バイオリアクター(bioreactors)」と呼ぶ製造モジュールは顧客に近い場所に設置可能なため、過酸化水素の輸送コストを削減できる。

一方で、Solugenが直近の課題としているのが、年間1000トンの過酸化水素の製造を可能にする大型プラントの建造だ。同社は今回の調達資金で、ヒューストンの広さ5エーカーの敷地にプラントを建造する。残りの資金でSolugenは、移動式の過酸化水素の製造ミルを開発する。

Chakrabartiによると、同社のプロダクトは巨大な需要が見込めるという。「世間の人々は、当社のことをよくあるエコ系の企業と考えるかもしれない。しかし、価格競争力の観点でSolugenは主要ブランドになれる」

同社は売上額を開示していないものの、石油やガス関連企業との契約により、年間10倍の売上成長を達成したという。さらに、来年完成する新プラントからは数千万ドル単位の売上が見込めるという。

2018年にSolugenは、同社が開発した生物分解性の家庭用洗浄シート「Ode to Clean」を、業界大手のDiamond Wipesに売却した。しかし、売却後も同社に対し原材料を提供している。

将来の成長を見据え、Solugenは製品ラインアップの拡大を検討中だ。新たな生物分解性プラスチック材料の開発も視野に入れるほか、米国の中西部に散らばるエタノール製造工場との提携も検討中という。

「Solugenのミッションは、化学産業を石油への依存から脱却させていくことだ」とChakrabartiは話した。

編集=上田裕資

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