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2019.05.25 11:15

イスラム教のラマダンから考える、「断食」という感覚の磨き方

イランのテヘランで日没後に食事をするイスラム教徒(2019年5月13日撮影、Getty Images)

イランのテヘランで日没後に食事をするイスラム教徒(2019年5月13日撮影、Getty Images)

現在ラマダン期間中です。

ラマダンは、ムスリムの五行の一つで、ヒジュラ暦(イスラム暦)における月の名です。ラマダン=断食だと認識している人もいますが、何も食べないわけではありません。日の出から日没の間に飲食を絶ち、太陽の光の下ではなく、月の光の下で食事をします。

フランスに住んでいると、この時期、イスラム教徒である友人や店のスタッフの生活が変わります。約1カ月間、最初は辛そうですが、最後の方はなんか悟ってるかな〜なんて思ったりしながら見ています。

自らを清め、連帯感を強める

イスラム教徒にとって、ラマダンは「聖なる月(期間)」ということなのですが、断食を通して感覚を取り戻すための修行といったところでしょうか。

日中に空腹を我慢して生きることの底辺を確認したり、自己犠牲を経験することで飢えた人や平等への共感を育むことで精神を鍛える。さらに、その苦しい体験を共に分かち合い、擦り合わせることで、ムスリム同士の連帯感や絆を強めているように思います。



また、期間中には日中の飲食を断つだけではなく、喧嘩や悪口や闘争などの忌避されることや、喫煙や性交渉などの欲も断つことにより、自身を清め信仰心を高めるとも言われています。

実は今年、ラマダンに入る前に、こちらのマルセイユ日本領事館からこんなメールが届きました。

<ラマダン月に伴う注意喚起>
5月6日(月)頃から6月7日(金)頃は,イスラム教のラマダン月及びラマダン明けの祭り(イード)に当たります(5月6日はゴールデンウイークの最終日に当たります)。近年、ラマダン月及びその前後に世界中で多くのテロ事件が発生しています。

どうも現実社会では、ラマダンの本意とは違うことが起きているのかもしれません。

僕はヨーロッパでラマダンを見ていて、せっかく日中に断食(ファスティング)をしているのに、日没後にファストフードであるケバブをほおばり、翌日に備え食い貯めをしている姿に疑問を感じます。実際、食い貯めるためなのか夜食が多くなり、通常より食事の量が増え、肥満になる人が多くなっているという報告もあるようです。



「これじゃまるで矛盾だな」と思います。早くて手軽だけど、味付けが濃く、糖分、塩分、脂質まみれで消化不良になりやすいファストフードでは、断食で研ぎ澄まされた感性が台無しです。微妙な違いに気づける体になっているときこそ、より自然なものを味わえばいいのになと思います。

ファストフードなどがない時代は違ったのかもしれませんが、忙しくなり、それに応えるように手軽なものが増えた今、欲をコントロールするのは難しいということでしょうか。これでは本末転倒だなと思うと同時に、自分も仕事に追われて食事を疎かにし、夜に食い溜めしてしまうときがあるので、気をつけなくてはと思います。
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文=松嶋啓介 写真=Getty Images

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