イスラム教のラマダンから考える、「断食」という感覚の磨き方

イランのテヘランで日没後に食事をするイスラム教徒(2019年5月13日撮影、Getty Images)


日本でもこの数年、プチ断食がブームになっています。断食ではなく、「ファスティング」という表現の方が浸透しているかもしれません。

なぜファスティングするのか。いくつか理由はあるようですが、ただ単純に体重を落とすというより、胃や腸などの消化器官を休ませ、体を内側からリセットするというところに魅力を感じている人が多い気がします。機械もそうですが、ヒトの臓器も、たまにはリセットボタンを押してあげることが必要です。

ところで、食にまつわるファストといえば、「ファストフード」もそうですが、「ブレックファスト」が浮かぶかと思います。一般的に「朝食」と訳されるこの言葉ですが、辞書を引くと「(時間に関係なく)その日最初に食べる食事」という意味があります。つまり、「断食」の状態を「破る」食事ということです。



夜、睡眠中に何も食べないという「断食」を終え、感覚が洗練されて繊細になっている時に、どんな食事をすべきか。栄養補給という目的でなく、感覚に向き合うという意味では、シンプルに素材そのものを味わえるものがいいでしょう。季節感のある鮮度の良い食材を、あまり調理せずそのままにいただく。そうすることで、微妙な味に気づく大切さを感じられるものです。

一流のアスリートの中には、毎朝同じものを食べるという人がいますが、味覚が敏感なときに、同じものをどう感じるかで自分の体の変化を図るという意味では、近いものがある気がします。

感度の高い人になる近道?

最近、「興味」という漢字をまじまじと見ていて、「味を興す」と書くことに気付きました。日々の食事で、味を探し、味に気づくということは、物事の違いや変化に気付く感度を高めることにつながっていくはずです。

ダイエットもファスティンブももちろんいいですが、ただ単純に食べ物を気をつけるだけではなく、同時に心や身体の内面と向き合うことが、本当の意味での健康や成長の近道になるのかなと思います。

ニース在住のシェフ松嶋啓介の「喰い改めよ!!」
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文=松嶋啓介 写真=Getty Images

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