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徳島県神山町は、起業家、移住者、地域住民らが 形成するコミュニティへと変貌を遂げた

可能性に満ちた地方を舞台に、クレイジーな情熱とアイデアで複数のコミュニティを渡り歩き、地域を変えていく越境イノベーターたち。「いまあるもの」に、新しい価値を見出せるこうした「アウトサイダー」たちこそが、これからの地方活性の鍵を握る。


地域活性化が成功する町の共通点は何か。キーマンに会って「共通解」を導き出そうと、2014年から4年をかけて、当時、東京大学公共政策大学院特任教授だった辻田昌弘(現・三井不動産企画調査部上席主幹)は、行脚を始めた。訪れたのは、徳島県神山町と上勝町、島根県海士町、岡山県西粟倉村など、「地方創生」の先進事例で紹介される町だ。「まるで聖地巡礼のような視察のラッシュですが、なぜか成功例を真似た横展開がない。それが疑問に思えました」

一方の辻田自身も共通解をなかなか見出せなかった。しかし、「共通解などなく、個々の “特殊解”ではないか」と思った瞬間、謎が解けたという。「キーマンたちは必ずしも計画的ではないし、金儲けも考えていない。みんな、やりたいことをやって、楽しんでいる。他とは違うことを、自分たちで考えて実行しているので視察しても真似ができないのです。彼らは税収増や人口増など定量的な経済価値で成功か失敗かを測ろうとはしておらず、これってビジネス視点ではありえない話です。しかし、地域活性化のアーティストだと捉えると、腑に落ちたのです」



ビジネスではなく、まるで地域というキャンバスに絵を描くアート。自然と周りに賛同者が集まってきて、地域が盛り上がる。結果的にビジネスにつながり、やがて「成功事例」と評価される。そう考えると、「イノベーションはむしろ企業内よりも、地域活性化の現場の方が起きやすいのではないか」と辻田には思えた。イノベーションを起こすには、論理や計画性ではなく、直感や閃きなどアーティスト的なセンスこそが起点となる。辻田が言う。「ならば、アーティスト的なセンスをもったキーマンが登場しやすい地域とその発生確率を高めることが重要だと思えてきたのです」

文=藤吉雅春

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