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2019.05.24

富山発の「クレイジーハウス」が日本の未来をつくる

少子化や人口流出で消滅する自治体が現れる一方で、東京の一極集中も問題になっている。そんななか、地元・富山に恩返しをしたいと常々考えていた筆者に届いた熱い想いとは。


突然だが、富山で古民家を買うことになった。

衝動買いというほどでもないが、考えた時間からそう思われても仕方がないかもしれない。

場所は富山県朝日町。富山県の東の端に位置し、新潟県との県境にある。県境は 「親不知子知(おやしらずこしらず)」という名の難所で、富山県と新潟県の人的な交流が阻まれていた場所であった。地理的に不利な環境から人口流出が止まらず、消滅可能性都市でも上位に位置している地域である。

そうした事情もあり、毎年空き家が増えている。そして空き家が増えると、活気も次第になくなっていく。少しでもその流れを食い止めるため、地元の若手が空き家をリノベーションして都会の人に貸し出ししたり、売却したりするプロジェクトを始めた。毎年40世帯ほど空き家が増えているが、その取り組みが功を奏して、少なくとも空き家が増えないところまで持ってくることができた。

地元・富山県でその事業に取り組んでいる「家印(やじるし)」の坂東秀昭社長にフェイスブックメッセージで熱心に誘われて朝日町を訪問することになり、あれよあれよという間に古民家を購入することになった。大したセールスマンである。

「だらだちゃ」で富山を元気に

私は1966年に富山県富山市で生まれた。朝日町は地縁も血縁もないが、いつか富山に恩返しを──前からそう思っていた。その意味でとてもよい機会をいただけた。古民家を活かすことで、地方創生プロジェクトを行う拠点にできるのではないかと考えたのだ。

その古民家はバカでかい。もともとは庄屋さんの家で、寄り合いができるほどのスペースがある。ふすまを取り払ったら70〜80人くらいは余裕で入る。ここで地元と都会の人が交流する場を設けたり、私のもう一つの本業である起業を促す起業塾を開催したりすることも可能だ。

富山県は生活環境がとても豊かな場所で、県民の生活満足度も就職率も高い。当面は問題なく存続するだろう。だが起業率が低く、新規企業がどんどん生まれる環境ではないのが弱点の一つだ。

とはいえ、どのような地域でも、新しく何かを始めたいという人たちは一定程度存在する。そのような人たちを活性化し、かつより良い成功に導くうえで少しでも力になれたらよいことだと思う。
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文=藤野英人

この記事は 「Forbes JAPAN 地方から生まれる「アウトサイダー経済」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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