ちなみに、世界第2位のホテルチェーンは、ヒルトン(90万室)で、第3位はインターコンチネンタル(80万室)とアメリカ勢が上位を占め、そのあとには中国のジンジャン・ホテル(70万室)が続くが、数字を見れば、旺盛な競合買収やフランチャイズ戦略を繰り広げてきたマリオットが突出している。
とはいえ、その巨大チェーンであるマリオットを圧倒的に凌駕する「ライバル」がある。2008年にサンフランシスコで創業されたエアビーアンドビーだ。
エアビーアンドビーは、宿泊施設を貸し出す人(ホスト)向けのウェブサイトで、マリオットの3.5倍の500万室の登録部屋数(非稼働中の部屋を除く)を持つ。いわば「民泊」で、東京オリンピックを前にホテルの客室数が絶対的に少なく、規制緩和を検討している日本とは違い、アメリカでは、民泊はホテルの補完システムではなく、完全に宿泊業の主流に位置している。
もちろん、登録した部屋が毎日宿泊用に提供されているわけではないので、単純な数の比較にそれほどの意味はないが、ウーバー同様、シリコンバレーが生んだこのネットビジネスは、値段の安さや潤沢なスペース、滞在者とホストのあいだの相互フィードバックのシステムがフェアだと好評で、全世界で年間2億6千万人が利用する。
ウーバーとは異なる民泊ビジネス
民泊は、部屋だけを借り受け家主と同じ建物で寝泊まりするスタイルと、丸ごと家やアパートを借り切るスタイルに大別されるが、とくに長期滞在ともなれば、ホテルなどと比べ、家ごとゆったりと借りることの満足度は高い。最近では、広大な庭やプール付きの豪邸を借りるという、体験型の利用も目立ってきた。
こうなると、従来のホテルサービスでは、この客層には訴求できず、「どんな旅行客でも」と手広く事業を広げてきたマリオットも、さすがにこの分野には手を出せなかった。
ところが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、このほど、とうとうマリオットが、この民泊ビジネスモデルに参入することを決めたという。今月から、アメリカとヨーロッパで豪邸2000軒と契約を結び、体験型ゴージャス民泊の提供を始める計画だと報じている。
この動きに、ヒルトンホテルもハイアットホテルも追随すべく検討に入っているというが、一方では、エアビーアンドビーが、格安ホテルを自ら買収するなどして実質ホテル業に参入、互いのテリトリーを侵食する様相となっている。エアビーアンドビーは、来年には株式上場を予定しているので、それを経て巨額の資金力を得れば、この動きはさらに加速するものとみられている。