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2019.05.22

英著名シェフ経営の飲食店破綻、料理配達サービスの人気も影響か

ジェイミー・オリバー(Photo by Theo Wargo / Getty Images)

英国人シェフのジェイミー・オリバーは過去20年、最も数多くのテレビ番組に出演してきたシェフの一人だ。24歳だった1999年に出演したテレビ番組「裸のシェフ(The Naked Chef)」をきっかけに、一躍有名になった。

フレンドリーでカジュアルなオリバーのスタイルは、料理をする男性の増加につながったといわれている。他にも幾つもの番組に出演、何冊もの料理本を出版してきたオリバーは、レストランの“帝国”を築いてきた。

だが、そのビジネスはここ数年、問題に直面していた。オリバーは5月21日、経営するレストラン・チェーンが管財人の管理下に入ったことを明らかにした。景気後退(リセッション)入りの可能性が消費者にも影響を及ぼし始め、同時に食習慣が変化する中、運営してきたレストラン25店舗のうち、22軒が閉鎖に追い込まれた。

英国内の報道によれば、オリバーは私財を投じることで破綻を回避しようとしてきたものの、ジェイミー・オリバー・グループで働く約1300人が職を失う危険にさらされている。2008年に開業した「ジェイミーズ・イタリアン」の店舗数は、ピーク時には42軒に上ったが、一部はすでに閉店している。

英BBCによると、同グループの管財人は声明で、次のように説明した。

「グループは、事業への追加投資を確保するためのプロセスに着手していた。オリバーは資金調達を円滑に進めるため、年初以降、私財400万ポンド(約5億6200万円)を投じた」

「だが、適切な出資額を確保できる見通しはなく、取締役らは業界を取り巻く現在の非常に困難な環境を考慮し、管財人を指名することを決定した」

英国では米国を上回るスピードで、料理の配達サービスを利用する人が増加している。同サービスを提供する企業の1社、デリバルー(Deliveroo)は先ごろ、米アマゾン・ドット・コムなどから多額の出資を受けたばかりだ。

多岐にわたり活躍

2000年代に一躍名声を得たオリバーは、私生活でも注目を集めた。当時出演していた番組では、交際中だった「ジュールズ」ことジュリエット・ノートンを話題にすることも多かった。

2000年に結婚したオリバー夫妻には、5人の子供がいる。自身の子供たちの成長に伴い、オリバーは学校での健康的な食事に対する関心を深めていった。

オリバーは政府に対し、学校からジャンクフードを排除することや、給食により良い選択肢を提供することを求めるキャンペーンを開始。その活動は、新たなテレビ番組への出演にもつながった。「ジェイミーズ・ミニストリー・オブ・フード(ジェイミーの食糧省)」では、英ヨークシャー地方を訪ね、地元の人に料理を教えた。

また、米国ではウェストバージニア州ハンティントンやロサンゼルスを舞台にした「Jamie Oliver’s Food Revolution(ジェイミー・オリバーのフードレボリューション)」が放送された。

オリバーが行ってきた数多くの活動には、英スーパーマーケット・チェーン、セインズベリーのテレビ・ラジオCMへの出演のほか、キッチン用品ブランド、仏ティファールとの調理器具の共同開発なども含まれる。

また、レシピ付きの食材宅配サービスを国際的に展開する独ハローフレッシュ、スーパーマーケット・チェーンの英テスコにレシピを提供している。

米英両国では、セレブリティ・シェフたちが激しい競争を繰り広げる一方で、デリバリー専門のレストランが登場。シェフたちの事業を取り巻く環境は、ますます厳しさを増している。

編集=木内涼子

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