ビジネス

2019.05.23

落合陽一率いる、ピクシーダストテクノロジーズが総額48億円の資金調達。大学発・先進技術の社会実装を推進

ピクシーダストテクノロジーズCEO 落合陽一



 ピクシーダストテクノロジーズCFO・関根喜之

「空間把握」をベースにすることで、より効率的なテクノロジーの実装が可能に
 
━━主要事業となる「空間開発型事業」について、概要を教えていただけますでしょうか。

ピクシーダストテクノロジーズ取締役CRO 共同創業者・星 貴之:自動運転型の車椅子「xWheel」や、3次元空間の特定箇所にのみ音を届ける指向性スピーカー「Sonoliards」、3次元⾳響浮遊技術「PixieDust」など。僕らの扱っている技術群は、3次元空間で物質をコントロールするものが多くあります。

3次元空間で物質をコントロールするためには、「どのルートで自動ロボットが動けばいいのか」「どの位置に音を届ければいいのか」というような、空間の把握が必要不可欠。人間とテクノロジーに介在し、空間を把握して空間内の制御をすることで、多くの産業の課題が解決できると思っています。

僕らが目指しているのは「空間把握」をベースとしてロボットや移動体の制御、人とのインターフェース制御を一気通貫して行い、現場の課題を解決すること。技術屋と思われがちですが、まずが「現場」の課題を知り、解決に向けてテクノロジーを実装する発想です。具体的な産業領域を発表することはまだできませんが、自動ロボットによる省人化や、新たな顧客体験、エンターテインメントの創造が実現できると考えています。

ピクシーダストテクノロジーズ代表取締役COO 村上泰一郎氏(以下、村上):この世界には自動化、省人化できていない「現場」がたくさんあります。多くの現場が人間の熟練技術や「勘」によって空間を把握しているため、テクノロジーによって代替できる業務は山積している。

いま、日本は労働力が減少しており、自動化、省人化するテクノロジーが待たれている状況です。しかし、いきなり自動ロボットを走らせようとしても、現場で機能するまでには時間がかかる。そこで、ロボットの動きを「空間」から把握し、動ける範囲を指定することで、より効率的にテクノロジーが実装できるのではないかと考えています。

━━落合さんはインタビューなどで「東京オリンピック・パラリンピックと大阪万博が日本の転換点となる」と頻りに発言されています。来たる2025年に向けて、ピクシーダストテクノロジーとして目指す目標はあるのでしょうか。

落合:特定の要素技術を扱うのではなく、社会の課題に合わせたソリューションを、弊社のアセットから提供していくことを目指しています。

先述したように、自動化していない領域にテクノロジーを組み込み、課題を解決していくモデルを、社会にたくさん生み出したい。2025年までには、弊社の「空間開発」の具体的な社会実装をお見せできるのではないかと考えています。


ピクシーダストテクノロジーズ代表取締役COO 村上泰一郎

村上:また、会社として推進していきたいのは「産学連携」です。日本の問題点として、大学の研究開発費が少ないことが語られがちですが、実はGDP比で考えると、アメリカとあまり差はありません。しかし、大学の技術が世の中に出ていき、「産業化」している、その結果として民間からお金が返ってくる比率が、アメリカとは比べ物にならないほど低い。日本のアカデミアから生み出された先進技術を、もっと産業として落とし込んでいかなければならないと考えています。

落合:これからの時代、障がい者や高齢者の身体的困難を解決するためには、「メガネ」のような1つのデバイスを大量配布するのではなく、一人ひとりの課題に寄り添ったデバイスを配布することが求められる。そして、個々人に最適化されたプロトタイプを打ち出していくことこそが、アカデミックの役目だと思っています。

文=半蔵門太郎 写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事