さらに、現在、主に扱われているスポーツ関連のプロダクトや薬品は男性を基本にして製造されている。男女平等が当たり前になった時代ではあるが、知られざる落とし穴と言っていいだろう。
この現実に着目したアプリがある。
先日開催された、「SPORTS TECH TOKYO キックオフ・カンファレンス」に参加した、スタートアップ約100社のなかで、女性の創業者のへレーネ・ギヨームさんがCEOを務める「WILD Technologies AI」だ。
同社は、「女性アスリート」に特化したAIコーチングアプリを開発している。19世紀から続く長い女性スポーツの歴史の中で、女性アスリートが抱えるスポーツへの支障に対した、おそらく初めての改善策と言っていいだろう。
女性アスリート専用サービスアプリ
まず、アプリの具体内容をヘレーネさんに尋ねたところ、女性特有の生理周期がもたらす身体への影響に着目しているという。
Image Credit: WILD Technologies AI
アプリ上で、基本情報や直近の生理日といった情報を入力。その後、利用者またはアプリが設定したスポーツにおける目標を基にトレーニングプランが設計される。
利用者が記入したアクティビティノートや、身につけているデバイスからのデータを収集し、トレーニングの成果や改善点をリアルタイムで確認。それらを基にAIが女性アスリート個人に適したアドバイスをするのだという。
主にデータ収集を用いたサービスを展開しているが、他の同様のサービスと異なるのは、生理周期といった女性特有の身体的特徴に即したデータ収集がされるという点だ。
CEOのヘレーネさんはこう話す。
「女性は男性と生物学的に大きく異なっているのですが、男性を対象とした医薬品や栄養メニューが女性にも使われていました。これらは、必ずしも女性アスリートに有効だとは限りません」
「女性の生理周期が、体調にさまざまな影響を及ぼすことはよく知られています。例えば、女性の身体が食物を消化する過程はその生理周期によって大きく異なります。時期によって、必要な栄養素も変わってくるのです」
男性が必要とする栄養素は基本的に一定だが、男女の生物学的違いから、女性アスリートの食事メニューは、生理周期を考慮した栄養バランスの工夫が必要だという。
「怪我のしやすさも生理周期に関係しています。関節弛緩もそのひとつで、女性の場合、周期によって関節の強度が変わり、変化に対応したトレーニングを行わなければ怪我のリスクが増えるのです。ACL(膝前十字靭帯)などは、とくに女性の場合、損傷しやすい部分ですね」