ヘレーネさんたちは、現在、女性アスリートに積極的に自社のアプリを使用してもらい、より詳細なデータを収集しているという。さらに研究を深め、女性の身体により適切かつ効果的なトレーニングを考えなければならないと考えている。
「アプリは、まだベータ版しか展開していませんが、近いうちに正式版のリリースを予定しています。初めはスポーツ業界に限定したサービスになりますが、今後はより広い業界での利用も実現できるようにするつもりです」
WILD Technologies AI創業者兼CEOのへレーネ・ギヨームさん
スポーツでの女性に特化したサービス なぜ「今」?
これまで、スポーツにおいて女性が声をあげる機会がなかったわけではない。例えば、1994年にはブライトンで第1回世界女性スポーツ会議が開催され、スポーツにおける男女不平等をなくすための国際女性スポーツワーキンググループ(IWG)が設立された。
同会議では「ブライトン宣言」が採択された。同宣言が掲げた10の原則・原理の中には、「女性選手の特別なニーズ」の考慮や「研究の規範と基準が女性と男性に関する研究に基づいていること」といった生物学的相違点を考慮したと見られる言及があった。
しかし、ヘレーネさんが語るように、生理周期といった女性特有の特徴に考慮したスポーツ関連のサービスが展開されてこなかったのはなぜだろうか。
理由の一つに、生理自体が「タブー視」されてきたことがあるだろう。
BBCによると、イギリスでは毎年約13万7000人の女子が生理用品へのアクセスが限られているがために学校を休むことがある。この不十分なアクセスの主な原因として、彼女たちが両親といった周囲の人々に生理に関したオープンな会話を躊躇するため、情報が伝達しづらいからだと言われている。
しかし、社会やスポーツのあり方が変化していく中、これまでタブー視されたものへも目を向ける必要があるだろう。
最近では、iPhoneで使用できる新たな絵文字として、生理の絵文字が追加された。これは、生理に対するタブーを破ることを促す目的として追加されたものだ。
従来タブー視されてきたものが、もはやタブーではなくなろうとしている。そんな中で、スポーツのみならずあらゆる形で女性特有の特徴を考慮したワンステップ上のサービスが増えることを期待したい。