注意だけで終わらせない 生産性を落とさないための「叱るルール」

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人を叱るのは難しい。「叱る」という字の如く、「口」で相手を「縦横」に切りつけることもある。たとえ理由は正しくても、叱ったほうも穏やかな心ではなくなる。そんなことは重々わかっていても、職場で部下を管理することが仕事となれば、日常的に叱っている場合もある。

もし、あなたがそのような立場になったら、叱る自分に疲れないために、「叱るルール」を決めておくことが大切だ。

もっとも大事なことは、何について、何故、叱るのかを、自分自身に明確にすることだ。ただ、「規則と違うから」ということだけでは、叱る理由を明らかにしているとは言えない。人は正当な理由づけができない感情を持つとストレスを抱えることになる。長くそんな状態を続ければ、不眠症を誘発しかねない。そうならないためにも、叱る理由を明確にしておく価値はある。

限度を決めておくのも重要だ。たとえばミスやトラブルも二度目までは叱らないと決めておく。回数を目安にすれば、相手の失敗が不注意の域を超えているか、いないかがわかる。

無意識に繰り返されるミスは、本人の気づいていない生活環境に原因があることが多い。一度のミスも許されないケースもあるが、人為的なミスは完全には無くすことはできないだろう。もし、一度のミスが命とりになるのなら、個人によりも、未然に防げなかった仕組みに問題があるといえよう。

相手の存在を否定してはいけない

叱ったあとは、相手とさっぱりした関係に戻りたい。いつまでも相手が失敗をしたことを引き合いにだせば、レッテルを張られていると思い、モチベーションは上がらなくなる。職場でそんなことが重なれば、生産性は落ちる。

つまり、面倒なことだが、叱った後は「相手を励ますこと」が大切なのだ。叱ったのは、これからに期待しているからだ、と。もし、叱った相手が家族だったら自然にそうしているはずだ。人の感情は微妙だ。期待されていれば、自ら改善しようという意欲も湧く。長期的には、叱ったことで、あなたは相手から感謝されるだろう。

こうして、細かいルールを決めておけば、冷静に叱ることができる。そうしないと、叱っているときに攻撃する感情が強くなってしまうことがある。たとえば、そのせいで、経験が少なく能力が及ばなかったことを、性格のせいにしてしまったりして、相手の存在そのものを否定するような言動をしかねない。これではとりかえしのつかない溝ができ、修復しずらい関係になってしまう。

見て見ぬふりをして叱らないのは、見捨てていることであり、愛情をかけていないのと同じだろう。叱るときこそ、自分なりのルールを決めて実行したい。

連載:表現力をよくするレシピ
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文=中井信之

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