SCMPは一般的に中国政府寄りの論調のメディアとして知られるが、今回の記事の主旨は、ファーウェイが発表した声明と真っ向から対立するものだ。
ファーウェイ創業者でCEOの任正非は21日、中国国営メディアの取材に「米国の措置で、ファーウェイの5Gビジネスは全く影響を受けない。5G技術に関していえば、他社が2~3年でわが社に追いつくことは不可能だ」と述べた。
一方で米商務省は20日、ファーウェイへの制裁措置の一部を90日間猶予すると発表していた。米商務省はファーウェイの既存の端末ユーザーは、今後も端末のOSのアップデートやサービスを受けられるとした。ただし、これは既に販売済みのファーウェイ端末に限られるものであり、新規のデバイスは対象範囲外とされた。
任は米国政府のポリシーに対し強気の姿勢を見せているが、ファーウェイの今後に関しては重大な懸念が生じている。
調査企業IDCのアジア太平洋部門を統括するBryan Maは、SCMPに対し「ファーウェイ端末の海外市場での売上は大きなダメージを受ける」と述べた。「グーグルのサービスが使えないとなると、ファーウェイ端末の利便性は大きく損なわれる」
ファーウェイのデバイスは、アンドロイドへのアクセスを完全に失う訳ではない。しかし、今回の措置は同社の競合ブランドらを大きく利することになる。
ブルームバーグは5月21日、「ファーウェイは2018年にアプリのメーカーに対し、海外のアプリストア向けのアプリを製作するよう依頼した」と伝えた。しかし、グーグルの協力が得られないとしたら、ファーウェイのアプリストアに未来は無い。ファーウェイは海外進出を図る上でアンドロイドに依存しており、スマホの販売においてもグーグルに依存しているからだ。
現状の動きはグーグルにとっても警戒すべきものだ。アンドロイドの競合となるOSが中国から勃興する可能性もある。しかし、スマホ市場がグローバルを前提としたものである一方で、中国メーカーの主要な市場は中国市場となっている。グーグルが被る被害は限定的なものになる。
SCMPは今回の動きでファーウェイが国際的地位を失う一方、メリットを得るのは韓国のサムスンや、中国のシャオミらだと述べている。
ファーウェイは先週末に、「米国の措置はファーウェイと米国の双方に損害を与える」とツイッターで発言した。しかし、ファーウェイが苦しい立場に追い込まれた事は明らかだ。
ここで注目されるのは、中国政府が今後、どのような措置を取るかだ。中国外務省の広報担当は5月18日の記者発表の場で、「米国政府のやり方は間違っている」と発言した。「中国政府は中国の企業を守るため、あらゆる必要な措置を講じていく」と広報担当は話していた。