米テック業界をレアアースで脅す中国、墓穴を掘る結果に?

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中国には、米国との貿易戦争を次の段階に進める考えがある。米国のテクノロジー産業と防衛産業向けのレアアース(希土類)の輸出を停止すると脅しをかけている。

中国共産党系メディアの環球時報は社説で、「レアアースの確保で米国は困難に直面」「米国は中国政府が持つ“最も重要な”レアアースを必要としている」などと指摘。以下のように述べている。

「米国は戦略的に重要な産業に必要なレアアースの供給量を国内で確保できなければ、中国に頼らざるを得ない」

「レアアースは現代の数多くのテクノロジーと兵器システムに不可欠なものだが、世界全体の供給量をコントロールするのは、主に中国だ」

「米国が国内のレアアース産業を再構築し、中国への依存度を低減すために国内の供給量を増やそうとしても、これから何年もかかるだろう」

それは、中国が「レアアースの生産に関する独占的な立場を通じて米国のハイテク部門の活力源を支配し、貿易戦争での勝利を収める」のに十分なほどの長い時間だ。

米バンヤンヒル・パブリッシングのシニア・リサーチアナリスト、テッド・バウマンも、これらと同様の見解を示している。中国が米国への輸出を禁止し、6カ月間にわたって(引き上げられた)米国の関税に耐えることができれば、ドナルド・トランプ米大統領が負けを認めざるを得なくなる可能性も十分にあるという。

ただ、バウマンによれば、それでも中国が貿易戦争のためにこの“武器”を使うのは、良い考えではない。

「中国はこの重要な鉱物について、世界中のその他の国から信頼できない貿易パートナーと見なされるようになる。そうなれば、代替資源の開発が急速に進むことになるだろう」

米国は、中国以外の供給国を捜すこともできる。米アウォイー・キャピタルのマネージング・パートナーは、これはベトナムやメキシコといった新興国が、市場にできた穴を埋める機会にもなると語る。

一方、経営コンサルティング会社A.T.カーニーのプリンシパル、ヨハン・ゴットは、両国の貿易戦争がより幅広く影響を及ぼすようになることを懸念している。

「中国は他国の政府に対し、その国の企業を通じて圧力をかけたことがある」

「米国との対立の激化がもたらす危険を認識している中国はこれまでのところ、かなり抑制的にカードを切っている。また、企業に対して制裁を課していることからも分かるように、米国には関税以外にも強力な兵器となる手段がある」

中国が貿易戦争において今後、実際にレアアースや企業を武器として用いるかどうかは分からない。だが、明らかなことが一つある。貿易戦争が続く限り、相手国との取引がある米中両国の企業にとって、ビジネスリスクは高まっていくということだ。

編集=木内涼子

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