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2019.05.26 13:00

中国版ネットフリックス「愛奇芸」がHip Hopで狙う海外市場

natmac stock / shutterstock.com

中国のSF映画「流転の地球 (The Wandering Earth)」は今年の春節の大ヒットとなり、母国での興行収入は7億ドル(約770億円)近くに達した。その後、この作品は4月30日からネットフリックスでも公開されたが、海外での注目度はさほど高いとはいえない。

昨年は中国のインターネットカルチャーを描いたドキュメンタリー映画「欲望人民共和国」が公開され、批評家からは高い評価を得たが、商業的にはふるわなかった。

「中国のエンターテイメントは海外に十分アピールできていない。背景には中国人の価値観が海外に伝わりにくいことがあげられる」と話すのは中国最大の動画ストリーミングサービス、「愛奇芸(iQiyi、アイチーイー)」のCEOを務めるYu Gongだ。

iQiyiは昨年末時点で8700万人の有料会員を抱え、中国のネットフリックスと呼ばれている。「言語の違いはさほどの問題ではない。今後の課題となるのは、中国の価値観や哲学を伝える文化的プロダクトを送り出していくことだ」

現在50歳のGongは、アリババのジャック・マーらと同じく、中国のインターネットの創世記からこの業界に身を置いてきた。彼は清華大学で学んだ後、1999年に不動産サイトの「focus.cn」を設立。その後、ポータルサイトの捜狐(SOHU)の設立を支援し、2000年に米国で上場させた。

当時から動画配信に興味を持っていたGongは2010年にDing Xin Holdingsを立ち上げ、同社を後にiQiyiに発展させた。その後、バイドゥから資金調達を実施して事業を拡大。iQiyiは中国を代表する動画ストリーミングサイトに成長した。

同社はハリウッドの大手映画スタジオや主要なテレビネットワークに加え、ネットフリックスとも提携を結んでいる。昨年3月に米ナスダック市場に上場を果たしたしたiQiyiの時価総額は167億ドルに達している。

iQiyiの出資には発行株式の50%以上を保有するバイドゥのほか、シャオミやHillhouse Capital Managementらが参加している。同社は現在のところ赤字で、2018年の損失は91億元を計上。損失額は2017年の37億元からさらに膨らんでいる。しかし、Gongは今後の成長に自信を抱いている。

ラッパーのオーディション番組を輸出

「中国の消費者は良いコンテンツには以前より多くの費用を支払うようになった」と彼は話す。iQiyiは昨年、3600万人の新規会員を獲得し、今年も同程度の伸びを見込んでいる。

Gongは4月に開催された北京映画祭で「動画配信サービスが拡大を続ける中で、既存の映画業界もマネタイズの手段を多様化させようとしている。今後は映画業界とのウィンウィンな関係を、さらに強固なものにしていく」と述べた。

iQiyiはオリジナル作品にも注力を深め、将来的に海外市場での支持拡大を狙っている。同社は映画作品だけでなく、中国のヒップホップをテーマとしたオーディション番組「The Rap of China(中国有嘻哈)」を母国で大ヒットさせ、今年はロサンゼルスでもラッパーのオーディションを開催する。

同社はこのオーディションを東南アジアやオセアニア地域にまで拡大し、世界の若者をヒップホップでつなごうとしている。

編集=上田裕資

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