地方発イノベーションの秘訣

固定翼型であるが垂直離陸できるSwiftXi社の自律制御型ドローン

ドローン(無人航空機)といえば、ほとんどの人が「マルチコプター(回転翼機)型」を思い浮かべるだろう。これは、ヘリコプターのようにローターと呼ばれるプロペラを回転させ、浮力を得るタイプだ。

一方で、飛行機のような形の「固定翼型」のドローンがある。主翼が生み出す揚力で浮くので、バッテリーの消耗が少なく、マルチコプター型の5倍を超える滞空時間を誇る。ただ難点は、離陸には専用のカタパルト(発射装置)が、着陸には長い滑走路が必要なので、使い勝手はよくない。

ところが、固定翼型であるにもかかわらず滑走路が要らない、つまり離着陸時に、マルチコプター型のように垂直に移動する「VTOL(Vertical Take-Off and Landing)型」のドローンが登場し、注目され始めた。

「VTOL型」ドローンで業界に衝撃

この新型ドローンの実戦投入を決めたのは、兵庫県と神戸市だ。2019年度に1億円近い予算を確保し、豪雨による土砂災害の被害調査、山間部における樹木の大量枯死(ナラ枯れ)の調査、台風の高潮に襲われた沿岸部の被害調査などに導入される。

まず行政が使ってみることで、民間でのドローンの利用拡大にもつなげたい考えだ。同時に、小型飛行機や地上からの目視で行っていた業務を高度化し、低コスト化しようとする狙いもある。

今月13日、公募で行われた事業者選定で、固定翼の「VTOL型」を採択すると発表があると、ドローン業界に衝撃が走った。安全や実績を重視する自治体が、なぜマルチコプター型でなくこのタイプを選んだのか。

採択されたのはSwiftXi社。アメリカの南カリフォルニアに本社を置くSwift Engineering社が、神戸情報大学院大学との共同出資で、2018年4月、神戸に設立した新興企業だ。

アメリカのSwift Engineering社を率いるのは、ヒロ松下。1986年からアメリカに渡り、カーレースに参戦、最高峰レースのひとつであるインディ500に日本人として初めて挑戦したことで知る人も多い。


SwiftXi社の会長兼CEOのヒロ松下(右)と社長の福岡賢二(左、神戸情報大学院大学副学長)

自身がレースでハンドルを握っていた車を開発するSwift Race Cars社に興味を持ち、松下は、航空宇宙分野を手掛けるエンジニアリング会社に発展させたいと考えた。同社が立地するカリフォルニアには航空宇宙分野の技術や人材が集まっていたからだ。

航空機はレースカーと同じく炭素繊維などの複合材料でつくられており、さらに航空機の翼とレースカーのウイングはともに流体力学の集大成ともいえ、両者のテクノロジーには共通点も多い。その後、会社名をSwift Engineeringに変え、無人航空システムや先進複合材料に特化し、航空機メーカーのボーイング社やロッキード・マーチン社などから信頼を勝ち取り、最新の部品を任される技術と実績を持つ。

文=多名部重則

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