同社代表の岡田侑貴氏は、「全身モデル自動生成AIは、データを学習した後であれば約1秒で新しい画像を生成することができます。ファーストステップとして、バナーやカタログなど大量にイメージ素材を必要とするシーンで使ってもらえるよう実用化を進めています」と話す。
岡田氏らデータグリッドの問題意識のひとつは、「広告撮影にかかるコストをいかに削減できるか」というものだ。
例えば、ECなどウェブ上でサービスを展開する際には大量のイメージ画像が必須となるが、モデルを起用したり、撮影環境を整えるコストに頭を悩ます事業者は多い。データグリッドは、事業者が自社で撮影すれば数万円かかっていた広告画像を、数千円で購入できるレベルまでコストダウンさせることを目標としている。
全身モデル自動生成AIは、現段階で1024×1024ピクセルの高解像度写真を安定して生成することに成功したと発表されているが、これはスマートフォンやほとんどすべてのPC上で画像の劣化なく表示できるサイズとなる。今後、ポスターや雑誌など印刷物、大規模モニターに対応した、さらに高解像度な画像の生成にも取り組んでいると岡田氏は説明する。
データグリッド
ところで、気になってくるのはGANの進化のスピード、そして自身の“肖像”を売り物のひとつにするモデル業の行方だ。その点にについて岡田氏は、「技術が進んだとしても、モデルのすべてがAIに置き換わることはない」と考えているという。
「クライアントやユーザーは人物の外面だけではなく、内面や人間性など個性に価値を置くケースが多々ある。広告分野のイメージ画像は、AIを使って外面のみを量産する方向性と、個性に重点を置く方向性で住み分けが進むというのが私の考えです。我々としては、前者に注力を傾けていきたい」(岡田氏)
AI技術は存在しない人物を量産することができるが、一方で広告分野においては特定個人、またその個人の影響力に価値を置き起用したいという需要がある。ただ、その“当たり前”も今後どうなるかは未知数だ。
「個性を感じる」というのは受け手側の心理に依存する。今後、AIで生成されたイメージに感化される消費者が増えれば、制作現場におけるコストダウンなど経済合理性と相まって、市場に一気に普及していくという可能性は充分に考えられる。
次の段階では、服装やポージングに個性や多様なバリエーションが求められるファッション系の画像生成にもチャレンジしていきたいと岡田氏。広告写真の常識をどう覆していくか注目だ。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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