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人生短し、リンクス多し

ロイヤル・ウエストノーフォーク・ゴルフクラブ

1892年に設立のロイヤル・ウエストノーフォーク・ゴルフクラブは、イングランド北東の、北海に面した海岸沿いに広がる。3年半にわたり続いた本連載を締めくくるに相応しいこれぞリンクスとでもいうべき自然の待ち受けるコースとは。


英国北東部ノーフォーク州、その北部の海岸沿いにロイヤル・ウエストノーフォーク・ゴルフクラブはある。

コースの美しさとは裏腹に、その攻略の難しさから、精神的にも体力的にも大変タフなコースとして有名である。そのタフさは、チェスで常にチェックメイトを仕掛けられているような、そんな恐怖を味わう感覚といってもいいであろう。

1892年に設立されホルコム・イングルビー設計によりつくられたこのコースは、100年以上経てもなお、ほとんどその姿を変えていない。



コースを設計したイングルビーは、シェイクスピア研究で有名な学者の息子として裕福な家に生まれ育ち、オックスフォード大学では史学で優秀な成績を収めた。

大学を卒業後は事務弁護士として開業し、ロンドンで数年を過ごす。その後、ノーフォークにあるキングズ・リンの首長として数期を務めたあと、英国国会議員としても活躍。だが最も彼を有名にしたのは、やはりロイヤル・ウエストノーフォークの設計士としてであろう。それだけロイヤル・ウエストノーフォークのコースが魅力的だからである。

ロイヤルの称号を名前に冠しているコースは過去にもこの連載で紹介してきたが、ロイヤル・ウエストノーフォークが珍しいのは、コース設立当初からその称号を得ていたという点であろう。時のウェールズ皇太子、のちの英国王エドワード7世がこのゴルフクラブのパトロンとなったのが、その背景にある。

その後も英国王室の面々が4人、グロスター公、ウィンザー公、そしてケント公が2人、このゴルフクラブのキャプテンを務めている。

ロイヤル・ウエストノーフォークのコースは、北海に面した海岸と広い塩性の湿地帯の間につくられており、それは本当に美しい。全長6457ヤードでパー71と、コースとしてはけっして距離があるわけではないが、海岸沿いに広がるコースだけに、一旦風が吹きはじめるとたちまち悪魔のような難コースへと変貌する。

特に1番ホールは、かのバーナード・ダーウィンが「寒く風の強い日のロイヤル・ウエストノーフォークの1番ホールほど恐ろしいものはない」と、その著書に記述を残している。コース全体はリンクスに典型的な行って来いの設計になっており、アウトはインランドを、インは海沿いをプレイすることになる。
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文=小泉泰郎

この記事は 「Forbes JAPAN 地方から生まれる「アウトサイダー経済」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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