韓国的・成功の極意。誘惑と「そもそもつき合わない」という新発想

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3つ目は、自己規制能力が強い人に対する誤解だ。強力な自己規制能力を持っている人をちょっと思い浮かべてみてほしい。「邪悪な誘惑に立ち向かう戦士」を想像するのではないだろうか? 欲求を退けるために険しく寄せられた眉間、したたる汗、善悪のせめぎとの戦い、といったものが目に浮かんだのでは。

しかし、最近の研究によると、自己規制能力が強い人は決して「がまんをする人」ではなく、「そもそもがまんの必要がない人」である。「誘惑と立ち向かう人」ではなく、「誘惑との対決を回避する人」である。「効果的に戦い、勝利を勝ち取る人」ではなく、「戦に関わらない人」である。

心理学者ビルヘルム・ホープマン研究チームは、205人の被験者に対して、1日数回ずつ、ランダムに連絡をした。彼らの目標や、今直面している誘惑について聞き出し、それを達成するために、どのように自分をコントロールしているか質問した。驚くことに、自己規制能力が強い人は、欲求を抑えようというアイディアそのものをあまり持たなかった。自己規制ができる人ほど、自己規制能力を「駆使する」必要を感じないのだ。

自己規制のポイントは「衝動を制御すること」ではない

がまんし続けるのはとても難しい。訓練して大きく変わるものでもないのだ。

抑制能力は高度な技術だが、必ずしも人生を成功に導く力とは限らない。真の自己規制の達人は、がまんはあまりせず、それどころかがまんすることを少しやめることで、かえって目標に近づく。彼らが選択した迂回路は、「誘惑を回避すること」と「プチ習慣作り」である。その2つについて説明しよう。

1. 自分の環境から誘惑を取り除け

ダイエット中ならば、帰り道は、回り道してでも、居酒屋が多いルートを避け、ヘルシーな菜食のレストランがあるルートを選ぶべきだ。心理学者のマリナ・ミリヤブスカイとマイクル・インズリットによる研究では、誘惑の要素が多い環境で根気強く勉学に励んだ学生の方が、疲労の速度が速かったという。一方、誘惑に惑わされないですむ環境にいた学生は、それほど疲労せずに目標を達成することができた。

心理学者ウォルター・ミシェルの、有名な「マシュマロ研究」では、子供たちにマシュマロを1個ずつ配り、15分間食べずに待てたら、もう1つあげることを伝えた。マシュマロを食べずに待ち続けた子供は、髪の毛で目をふさいだり、歌を歌ったり、誘惑を避けるためにマシュマロに背を向けて座ったり、とにかく気を紛らわす(誘惑と戦わない)ための行動をとった。


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そしてマシュマロをがまんできずに食べた子供たちより、がまんした子たちは、学業面、健康面、そして社会に出てからも、より「よい」人生を送ったという結果が出た。

また、こういう話もある。数年にわたって、私のある知人の日課は深夜に映画を観ることだった。そして、夜更かししては次の日の午前中を無駄に過ごしてしまっていた彼は、ある時この悪癖に、たった一夜で幕を降ろすことに成功したのだ。つまり、「部屋からパソコンを追い出す」ということを思いついたのである。誘惑の原因を見据え、環境からそれを取り除く方法を見つけることこそが重要だ。
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翻訳=裵麗善(ぺ・リョソン) 編集=石井節子

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