Slack、急成長の秘訣──人事トップが明かした、採用のポイント、組織づくりの裏側

Slackのカンファレンス「Frontiers 2019」のセッションに登壇したロビー・クォック


──どのようにして、全社員に浸透させているのでしょうか?

この考え方を全社員に浸透させるために、主に3つのことをしています。まず1つがオンボーディングです。毎週、新しく入ってきた社員に対してオンボーディングをしているのですが、そのときに「仕事場に長くいなくてもいい、家に帰ってもいいんだ」ということを、きちんと説明しています。

次にオフィスに遊び道具を置いていません。一般的なスタートアップのオフィスには卓球台やゲーム機などが置いてあると思いますが、Slackのオフィスには一切ありません。それはオフィスにいるときは仕事に集中し、仕事が終わったら家に帰って自由に過ごすことに重きを置いているからです。遊び道具があると、仕事が終わった後に遊んでしまいますから。

そして最後は、Slack上での「おやすみモード」の推奨です。例えば、平日の朝8時前、夕方17時以降、そして土日は全日おやすみモードを設定してもらうようにしています。

もちろん、中には家に帰らずにずっと仕事をしていたい、という人もいるでしょう。彼らに「仕事をするな」と強制することはありません。しかし、仕事場が好きな社員がいたら、きちんと話をするようにマネージャーには伝えています。

──今回カンファレンスに参加してみて、自社のプロダクトについて楽しそうに話す社員の姿が印象的でした。ロビーさんが考える“Slackらしさ”とは何でしょうか?

まずは「顧客中心」であることが最大の特徴です。それを踏まえた上で、Slackは6つのコアバリューを掲げています。

それが「Courtesy(思いやり)」「Empathy(共感)」「Playfulness(遊び心)」「 Craftsmanship(匠の精神)」「Thriving(向上心)」「Solidarity(チームワーク)」の6つです。このコアバリューを体現していくことが、社員同士のコラボレーションを促進し、最終的にお客様にとって最高なサービスの実現につながっていくのです。


Slackのサンフランシスコオフィス

──この6つのコアバリューを兼ね備えた人材を採用するのは決して簡単なことではないと思います。採用の際、どのようなことを意識されているのでしょうか?

面接の際、その人物がコアバリューを兼ね備えているかどうか、色んな方向から検討していきます。私は主にコアバリューを兼ね備えている人材には「4つの特性」があると思っています。それが「Smart(好奇心、探究心、創意工夫)」「Humble(向上心、相手への敬意と思いやり)」「Hardworking(ハングリー精神、自己実現、プロ意識)」「Collaborative(チームワーク、切磋琢磨)」です。

例えば、この「Hardworking」はどれだけ勤務時間が長いかどうかではなく、いかに自分がやらなければいけないことにフォーカスできるかどうかを重視しています。

この4つの特性をもとに、面接の際は質問をして話を聞きながら、それぞれの項目をどれだけ満たしているか点数をつけていきます。

──例えば、どのような質問をされるのでしょうか?

「Humble」については、こんな質問をします。「もし、あなたがマネージャーだったとして、部下からフィードバックをもらったとします。そのフィードバックをもらい、どんな行動をしましたか?」と。この質問に対する答えで、その人が相手への敬意と思いやりがあるかどうかが分かります。

きちんと行動に移す人は、自分には全く問題ないと思っていたとしても、部下からのフィードバックを成長のチャンスと捉え、それをきちんと受け止め、行動するでしょう。そういった人はSlackのカルチャーにマッチした人材だと思います。
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文=新國翔大

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