小学校のプログラミング教育は、「エンジニア養成教育」ではない

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2020年度から新学習指導要領の完全実施により、小学校でプログラミング教育が必修となる。中学校では2010年度からすでに必修となっており、高等学校では2022年度から教科「情報」でプログラミングの内容が含まれる「情報I」が必修になることで、小学校から高等学校まで12年間を通して、プログラミング教育を系統的に進めようという文部科学省の取組である。

この背景には、前回のコラムでも取り上げた「Society5.0」の社会を生きていくのに必要な力を子供たちにつけさせていくことが一番大きな理由としてあげられる。

プログラミング教育のスタートとなる小学校段階は、大きく分けて2つの学習課程がある。

・コンピュータを使って行うプログラミング学習
・コンピュータを使わずアンプラグドで行うプログラミング学習

最近、後者の「アンプラグドプログラミング学習」の実践例に対して「コンピュータを使わないからだめ」というような、否定的な書き込みやコメントを見ることが多くなってきた。

確かに、文部科学省が先生方に示している「小学校プログラミング教育の手引き」にも、アンプラグドプログラミング学習だけでなく、ねらいに基づいてコンピュータを使うプログラミング学習を進めることが書かれている。しかし、それは6年間を見通してのことであって、個別の実践を否定するものではない。

「コンピュータを使わないからだめ」を言いかえると、「コンピュータを使うからよい」のか?

二極論的に話をしてしまうとそうなるが、使うから、使わないからということがポイントではないのだ。ただ、アンプラグドだけすればいいんだ、という極論であればもちろん私も否定する。

最近公開された、北海道石狩市の「プログラミング教育指導事例集2018」では、実践例28例中20例がアンプラグドである。また、岡山県総合教育センターの「岡山県小学校プログラミング教育実践事例集2019」でも、実践例13例中1例がアンプラグドとなっている。このように先進的に取り組んでいるところでも、アンプラグド学習とコンピュータを使った学習を組み合わせている。否定ではなく、バランスをとっているのだ。
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文=望月陽一郎

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