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2019.05.17

「赤いクルマ」禁止ルールを変えたのは誰? クレイジーな偉人伝 part3

一聴すると凡人には常識外れに思えることをとにかく諦めずに続け、いくつもの挑戦の中からたったひとつの金脈を見つける偉人のクレイジーとも言える熱狂列伝を3回に分けて紹介しよう。




1990年代、インドに国産の使い捨て生理用ナプキンはなく、輸入品を買える人は一部の富裕層だけだった。ムルガナンダムは8袋20ルピー(3日分の食費に相当)を購入して分解したところ、中身はただの綿。0.1ルピーもしない10グラムの綿が、90%のインドの女性に手が届かない価格なのだ。

すぐさま試作品を作り、妻に試すように促すが「使い物にならない」と却下。改良品を作るも「そうすぐには試せない」と言われ、初めて彼は生理が月に1度ということを知る。

生理は穢れとされ、話すこと自体タブーだったため、知識がなかったのだ。誰も試してくれないので自分の腰にヤギの血を入れたゴム袋を巻き付けパンツに滴り落とす「月経体験マシン」を作り装着。6年の月日を経てついに満足いくものが完成した。格安ナプキンの市場規模は莫大だが、彼は自分が儲ける手段とせず、たった3工程の手動機械を開発、貧しい女性たちが自分で製造・販売できるように支援するシステムを生み出した。



20世紀はじめ、当時のアメリカでは避妊と中絶は違法とされ、避妊具は使用禁止どころか猥褻物という認識だった。

マーガレット・サンガーがニューヨークのスラム街でヘルスワーカーとして直面したのが、危険を承知で妊婦自らが行う中絶。女性の人権と貧困からの解放を目指し、自らヨーロッパで探してきた避妊薬の普及活動を行う。

指名手配・逮捕・留置・裁判を繰り返すうち、政府やカトリック教会から「パブリック・エネミー」とまで呼ばれ、家族を残し国外逃亡するも、夫までが逮捕される始末。

その後、科学者たちにピルの開発を促し完成させたことで、女性の命と健康を守り自ら妊娠を制限できるようになる。困った人を助けたいというシンプルな情熱が、女性の人権と自立とキャリア向上のためのイノベーションを巻き起こした。



マニアのための機械であるコンピュータを再定義し、ライフスタイルに変えた改革者ジョブズ。彼の原動力は、周囲とは無関係に自説を完遂できる点だろう。

それが悪い方に出れば、「菜食主義者は臭わない」との自説で頑なにシャワーを浴びず、夜勤を命じられるハメになり、良い方に出現すれば、初代iMacや音楽のダウンロード販売普及や、物理キーボードのないスマートフォンにつながった。初代iMacは、こんなものはパソコンじゃない、と保守勢力には酷評されたが、結果はご覧のとおりだ。

ジョブズは周囲(会社)を顧みないことで、「自社の技術としてできること」ではなく「近未来のライフスタイル」を求め、前例のない技術開発を強行した。決して満足せず、魂のこもった提案であるかどうかを見極めるため、意図的に却下を繰り返すこともあったという。
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文=三井三奈子 イラストレーション=ジョエル・キンメル

この記事は 「Forbes JAPAN 地方から生まれる「アウトサイダー経済」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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