アパレルD2C勃興時代における、Amazon Fashionの戦略

Amazon Fashionのバイスプレジデント ジェームズ・ピータース氏


──AT TOKYOでは、ファッションショーなどのリアルイベント、またオンラインでの情報発信とアイテム販売がメインでしたが、今回ポップアップとしてリアル店舗を出店されました。その理由は何でしょうか?

Amazonは総合オンラインストアですから、それを活用して、デザイナーの力を発揮してもらうことが今回の狙いです。AT TOKYOでは、常にAT TOKYOのビジョンに強く共鳴してくれる人を模索しているわけですが、今回のデザイナーであるVERDYさんは、奥さまとよく時間を過ごした思い出の場所がカフェだったそう。Girls Don’t Cryとは、奥さまにずっと笑顔でいて欲しいという願いを込めてできたプロジェクトです。だから、今回はGirls Don’t Cryにとって縁のある「カフェ」に彼のクリエイティビティを落とし込んで、実現に至りました。

リアル店舗を出店することに、私たちはそこまで深い意味を持っていません。とにかく、ブランドが主導であること。カフェでなくとも、ショーやパーティーなどその表現方法はたくさんあるでしょう。ブランドのメッセージを伝える最適な手段を選び、様々な形でお手伝いしていきたいと思っています。

──これまでANREALAGEやAMBUSH(アンブッシュ)といった、国内外でも人気の高いドメスティックブランドをAT TOKYOでフィーチャーされてきましたが、Amazonとしていま注目しているブランドはありますか?

具体的には伏せますが、上述のように、私たちの活動に深く共鳴してくださるブランドとご一緒できればと思っています。これまでずっとこの取り組みをやってきて、多くのブランドやデザイナーと話を進めてきました。もしご一緒できる機会が出てきたら、というかたちです。

多くのアパレル企業とは異なり、Amazonのターゲットは「服を着る人々全員」だと考えています。ですので、非常に幅広いブランドと取り組みができるように現在進めているところです。



──いまアメリカでは、Everlane(エバーレーン)やAllbirds(オールバーズ)に代表されるように、ミレニアルズから高い支持を得ているアパレルのD2C企業が次々とリアル店舗を構え、ブランドの世界観やメッセージをより純度高く伝えようとしています。オンラインのショッピングサイトとしてアパレルを販売しているAmazonとして、この動きはどのように捉えていますか?

我々がAT TOKYOを通じて目指してきた取り組みとしては、これまでオンライン上でつながっていなかったデザイナーさんとファンを直接繋ぎ、リーチすること。そこのお手伝いをしたかったのです。

ただ、オンライン主体のアパレルにおいて、先ほどおっしゃった企業が展開しているような「店舗」がどうしても必要なものかというと、それはNOだと思います。というのも、現在Instagramなどのソーシャルメディアを使えば、自分たちのクリエイティビティを伝えることはできるはず。プラットフォーム上の表現としても、過去数年の間で大きな変化が遂げられてきたわけなので、まだこの変化は続くのではないでしょうか。
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文=石原龍太郎 写真=柴崎まどか

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