その要因のひとつは「テクノロジー」の進歩と民主化だ。プリントや縫製に関する技術や機器の身近化によって服作りへのハードルは下がった。自分たちの手でつくることもできれば、全国各地の工場とインターネット上のプラットフォームを介して提携し、さらに質の高いものづくりができる。
服を売るプロセスも簡単になった。Instagramや各ショッピングアプリなどオンラインのプラットフォームを使えば顧客と直接やり取りができるため、中間マージンを省くことができ、商品の良さやブランドの世界観をダイレクトに伝えることができる。D2Cが盛り上がってきているのも、消費者ニーズの変化とテクノロジーの進歩・民主化があってこそ。
テクノロジー×プラットフォームで私たちの生活を大きく変えた企業のひとつに、Amazonがある。そのAmazonが、日本においてファッション領域に足を踏み入れた象徴的な出来事は2016年秋のこと。「東コレ」とも略されるファッションの祭典、東京コレクションの冠スポンサーにAmazon Fashionが就任。「アマゾン ファッション ウィーク東京(以下、AFWT)」とし、約1週間にわたって数多くのデザイナーがコレクションを発表している。
Amazonは2017年春夏のAFWT開催と同時に、「AT TOKYO」という取り組みも始めている。AT TOKYOとは、ファッションやデザイン業界への継続的な支援を目的に、東京発の国内ブランドをピックアップするプログラム。19年3月に開催された「AFWT 2019 A/W」の期間中にはイベントは実施されなかったが、オンライン上では過去にAT TOKYOに参加したANREALAGE(アンリアレイジ)やN.HOOLYWOOD(エヌ ハリウッド)をはじめとする、ドメスティックブランドをフィーチャーし、デザイナーインタビューやブランドストーリーと共に取り上げている。
これまでショーやライブペイントなど様々な展開をしてきた「AT TOKYO」だが、4月下旬、原宿に初の「リアル店舗」を期間限定オープンした。これは、いま国内外で人気のグラフィックアーティスト・VERDY氏が手がける「Girls Don’t Cry(ガールズドントクライ)」と、AT TOKYOがコラボし実現したもの。主となる機能はカフェで、内装や外観をGirls Don’t Cryとタッグを組み作り上げたものだ。
世界観の発信となるリアルイベント、そしてオンラインでの販売とは別に、リアル店舗を作ったのは一体なぜだろうか。その理由を、Amazon Fashionのバイスプレジデントであるジェームズ・ピータース氏に聞いた。