自動運転分野では、多くの専門家が「あらゆる状況に対応できるよう、車両をリモート操作可能にすることが重要だ」と述べている。そんな中、自動運転車の遠隔サポートテクノロジーを開発するシリコンバレー企業が「ファントム・オート(Phantom Auto)」だ。
同社は自動運転のシステムが故障した場合に、人間が遠隔操作で運転を引き継ぐソリューションを提供する。ファントム・オートが巨大な成長を見込むのが、ロジスティクスの分野だ。
トラックが出入りする物流センターでは、一般道のように歩行者の安全を意識する必要がなく、ファントムの技術を導入するには理想的な環境といえる。
オランダのトラックメーカー、TERBERGはファントムのテクノロジーを導入し、米国のアトランタで実施したデモ走行で、2500マイル離れた場所からリモート運転する現場を公開した。
ファントムは既に小売業界の大手数社と連携し、サプライチェーンへの同社の技術の導入を進めている。高度に自動化された物流センターは、わずか数名でオペレーションを行うことが可能だが、トラックの発着や荷物の積み下ろしの際には最低限の人員が必要になる。そこで活用されるのが、ファントムの遠隔サポート技術だ。
ただし、同社の技術の適用範囲は物流センターには限らない。ファントムの共同創業者のElliot Katzは次のように述べる。「街路を走行するデリバリーロボットの多くも、当社の遠隔操作テクノロジーを用いている。食事の宅配分野でも効率的な輸送を実現する上で、リモート操作は重要だ」
背景にはデリバリーロボットが抱える技術的課題がある。現状のロボットの多くはまだ完全な自律走行を実現しておらず、人間によるリモート操作を可能にするファントムの技術は重宝される。ロボットが障害物に乗り上げた場合でも、同社のテクノロジーを使えば、速やかに対応が可能だ。
アマゾンやFedEx、米国のフードデリバリー大手のPostmatesらがロボットデリバリーの実験を進める中で、Katzは特定の企業名をあげないものの、今後2年ほどで巨大な需要をつかんでいくと述べた。
ファントム・オートは先日、1300万ドルのシリーズA資金調達を実施し、累計の調達額は1900万ドル(約21億円)に達している。