ビジネス

2019.05.16

福岡の過去と現在を知る男が明かす、福岡がスタートアップ都市に成長できたワケ

Pearの顧問を務める進浩人


人と違うことをやるのが好きな人が福岡には多いんですよ。行政が一緒になって空気を醸成したのがポイントだったのかもしれませんね。

福岡人の気質について私が気に入っているのは、伝統品の絹織物「博多織」を手がける職人の方々が「縦糸に伝統、横糸に冒険心」という言葉を大切にされていること。単に伝統を受け継ぐだけでなく、変化を加えることで時代に合わせて進化しようというマインドがあるんです。これがスタートアップ文化とうまくマッチしたのかもしれませんね。

東京の後追いばかりしても仕方ない

──東京と福岡の両方で長年スタートアップに携わられていますが、両都市の共通点や相違点はありますか?

そこまで目立った違いはありませんが、福岡のスタートアップは家族や趣味と言ったQoLにも気を配る傾向にある。逆にビジョナリーな起業家は、東京に多いですね。10億円以上を調達して壮大な目標に向けたリスキーなビジネスに挑む人は、現時点では福岡には少ない気がします。

もしかしたら、福岡は物価も安くてご飯も美味しいなど暮らしやすいからかもしれませんね(笑)。その意味でも何か一つのことに集中したい人には東京の方が向いているかもしれません。

どちらにも良さをあるので、起業家には東京と福岡の両方に住んでみて違いを体感してほしいですね。上っ面の情報だけ満足せず実際に経験してみなければ、比較もできないですから。

──福岡にはZOZOテクノロジーズの研究所 福岡拠点やメルカリの福岡オフィス、LINE Fukuokaなど、大企業の拠点にもなっています。これらの存在は、スタートアップエコシステムに影響があるのでしょうか。

これについては否定と肯定、両方の意見を聞きますね。前者については、優秀なエンジニアが大企業に吸い取られてしまいベンチャーに人材が行き渡らなくなるという見方。後者については大企業で育った人がベンチャーを立ち上げたりジョインしたりすることで、長期的にエコシステムが豊かになるという見方。僕は後者で、プラスの影響が大きいと思っていますよ。



──スタートアップ都市としての福岡がより発展するためには、どのよう要素が必要でしょうか。

東京と比較されることが多いのですが、東京の後追いばかりしても仕方がない。規模の面で東京に匹敵するのは難しくても、福岡だけのオリジナリティを出せれば、より魅力的になるのではないでしょうか。

例えば、海外との交流。福岡では台北市との相互支援を締結しましたし、シリコンバレーの起業家との交流もサポートしています。こうした交流がより盛んになれば、福岡発の起業家が東京に進出せずに、直接グローバルに羽ばたくケースも増えるでしょう。

ある程度の成功を収めた先輩起業家と若手の交流も大切です。GMOペパボやウミーベなどのIPOやM&Aを果たした企業と地域のベンチャーが関われば、双方にとって新たな発見があるのではないでしょうか。弊社としても、より積極的にスタートアップと連携していきたいですね。

文=野口直希 写真=小田駿一

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