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「迎合」ではなく「尊重」しあえる組織とは?

佐野:色々な組織で働く人を見ていると、新卒時にはあまり差がなくても数年後には目がキラキラして仕事の意欲に溢れた人と、目が死んでいる人にハッキリわかれる差が露骨にある気がします。

多くの人は仕事に対するモチベーションがないわけではないのですが、後者は上司に忖度しているうちに自分の価値観に沿わないことも心を無にしてやらなければならず、それが重なると自分でも気が付かずに病んでしまう。こうした自己矛盾を継続させる仕組みは、個人だけでなく組織全体の死を招くと思っています。


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篠田:私も日本の銀行に勤めていた頃は、そうした我慢強さを要求されている気がしました。当時の私はMBAを取得して、自由な発言が歓迎される職場にうつりましたが、自己矛盾が生まれる組織とそうでない組織の違いは、どこにあるのでしょうか?

佐野:    組織がヒエラルキー型かどうかはあまり重要ではなくて、大事なのはそこに「尊重」があるかどうかだと思います。わかりやすくいうと、部下の提案を却下するときに「とてもいいアイデアだけど、今回はこういった理由で採用には至らなかった。次、がんばろう」といった説明責任と相手の立場を考慮した一言をかけてあげることができるかどうか。

仮に意見が通らなかったとしても、お互いが意見を尊重する姿勢を見せることで、社員は自主的な頑張りを評価される土壌があると感じることができる。「部下に自主性がない」というリーダーの嘆きをよく聞きますが、その大半はチームの環境づくりに原因があるのではないでしょうか。

篠田:その通りですね。一方、部下にもできることはあると思っていて。私が大企業にいたとき実行して効果があったのは、指示を振られたときはまず「本当にその課題を抱えているのは誰か」を探すことです。

組織では私に指示を振った本人が必ずしも課題感を抱えているとは限りません。どこかで問題が起こって、いろいろな伝言ゲームを経由した結果として私にその仕事が指示されたのかもしれない。

課題の大元にあらかじめ詳細を尋ねておけば、どんな提案をすべきかはかなり掴めるはず。仕事を振られるがままに応じていると受け身になってしまうので、自分の意見を通すための前提を知っておく工夫ができるといいですよね。

佐野:はい。部下から提案をもらったときに、内容が少しズレていることもあると思うのですが、その際、部下側ではなく、自身のこととして、「前提共有が足りなかったかな」と客観視できるかどうか。また、もし自分にも改善点があるとしたら、上司から「ごめん、説明が足りていなかった」と言えるかどうか。信頼を基盤にした組織を構築するための大きなカギは、いかにメンバー間で尊重しあう空気をつくれるかどうかだと思っています。

一方で、「尊重」は、しばしば「迎合」と混同されてしまいます。何も考えず上司に言われたことをただこなすだけの迎合は、いってしまえば旧来型の日本組織で命令に従うだけのスタンスです。しかし、従業員からすれば面倒臭いことを考えずに迎合してしまった方が短期的な評価をあげやすい。組織のメンバーは常にこうした矛盾を抱えています。

構成=野口直希 写真=小田駿一

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