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女性起業家のプロジェクトを認知・支援し、奨励することを目的とした国際ビジネスプランコンペティションとして、カルティエとINSEADビジネススクール、マッキンゼー・アンド・カンパニーが2006年に開設したCARTIER WOMEN’S INITIATIVE (カルティエ ウーマンズ イニシアチブ、以下CWI)。
 
設立1〜3年目(2020年度より1〜5年目へ変更)のシード期のスタートアップを対象にしているにも関わらず、受賞企業の80%が現在も事業を継続している。世界規模でみても、創業5年でアメリカでは約48%、ドイツ、フランスでも約40%の企業のみが事業継続を実現している(2017年発表の中小企業庁「中小企業のライフサイクル」統計より)。これを考えると、驚異的な数字だ。
 
今でこそ女性起業家の存在やその独特の感性、アイデアが注目されているが、そもそも2006年当時に女性起業家に着目したカルティエの先見性に驚く。
 
そして2019年。年々盛り上がりを増し、14回目を迎えたCWIの舞台はサンフランシスコだ。Forbes JAPAN編集部はこの熱気溢れるCWIを現地取材した。現地の様子を詳報する。

CWIでは現代のグローバルな課題を解決する原動力となるような世界の女性起業家を支援し、かつそれらのビジネスソリューションを広く知らしめることをミッションとしている。
 
142カ国から2900もの応募者

毎年、7つの地域(中南米、北米、ヨーロッパ、サハラ以南のアフリカ、中東および北アフリカ、極東アジア、東南アジア)からそれぞれ3名、計21名の女性起業家がファイナリストとして選出される。


受賞者に渡されるトロフィー

2019年度は世界142カ国から2900の応募があった。中でもMENA(中東および北アフリカ)からの応募がもっとも多く、市場の活気を反映している。そして今回は、東アジア地域から一次選考を通過し、日本人はじめてのファイナリストとして、SHE株式会社の中山紗彩が選出されたこともハイライトのひとつと言える。

SHEは「ミレニアルズの私らしい生き方を叶えるプラットフォーム事業」を展開。21世紀を生きる女性たちが自分らしい働き方を叶えられるよう、クリエイティブスキルのレッスン、メンタリング、仕事の機会を提供している。中山は21名のファイナリストのひとりとして、サンフランシスコでのアワードウィークに挑んだ。

各所で開催されるイベント

14回を迎えたCWIの舞台はサンフランシスコだ。Forbes JAPAN編集部はこの熱気溢れるCWIを現地取材した。

CWIの特徴の一つは、アワードウィークだ。ファイナリストたちはアワードの1週間前よりサンフランシスコで一堂に会することになる。プレゼンテーションのレクチャーやビジネスモデルの構築などの「アサインメント」に取り組み、互いに切磋琢磨し合い、最終選考に臨む。

また、本年のCWIのテーマは、「THE RIPPLE EFFECT(波及効果)」だ。一つの行動が、周りに広がり、世界規模へと広がる大きなものとなっていく。サンフランシスコのあらゆる場所で過去の受賞者によるセッションやワークショップなど、様々なインスピレーショナルなイベントが随所で実施され、まさに波及効果のごとくサンフランシスコの街にCWIのムーブメントが広がった。




アワード会場内も本年のCWIのテーマ「THE RIPPLE EFFECT(波及効果)」をイメージしたレイアウトであった

カルティエCEOのシリル・ヴィニュロン氏は「私たちが女性起業家を支援するのは、女性ならではの感性で良いものを世に生み出してもらい、世界のみなさんにハッピーになってもらうためです」と話す。

世界中から3000人近い数の女性起業家の応募が殺到するCWIの魅力は一体何なのか。ラグジュアリーブランドであるカルティエの名を冠したコンペティションであるからというだけではなく、14年にわたる過程でカルティエが模索してきた、「起業家」という女性たちの新たな「生き方」自体を支援する姿勢にあるといえよう。

女性起業家たちを「競わせる」ことが目的ではなく、女性起業家を中心とした大きなコミュニティを形成し、互いにインスピレーションを与えながら、世界的なムーブメントを起こそうとしている。それがひいては社会課題を解決し、世界に新たな価値をもたらすことに繋がるのだ──。主催者であるカルティエのそんな信念を、現地でひしひしと感じることになった。

5月1日には女性のために作られた会員制のコワーキングスペース「WING」で会員女性たちに向けた、セミクローズドのセッションが行われた。過去の受賞者がCWIの経験を振り返り、実践的なアドバイスを送った。WINGの会員女性たちのビジネス上でのリアルな悩みを聞き、アドバイスをする場面もみられた。CWIがその年の受賞者に限らず、女性起業家への継続的なコミュニティであると強く感じた一幕であった。



質疑応答では「CWIのコミュニティに入って変わったことは?」「CWIに応募するにはなにかテクノロジーを開発している事業でないといけないのでしょうか?」など熱心かつ具体的な質問が挙がった。メモをとる女性もおり、受賞者たちの言葉を一言一句聞き漏らさぬような姿勢は、彼女たちのCWIへの興味や応募を視野に入れていることが感じられる。セッションは終始、活気に満ち溢れていた。





迎えた5月2日アワード当日、フォート・メイソンの会場では、表彰のセレモニーの前に、ミート&ラーン(ワークショップやトークセッション)や特別に監修されたTEDセッションなど様々なプログラムが準備されていた。今年度のファイナリストだけでなく、過去の受賞者や審査員など、これまでCWIに関わったあらゆる人々が参加しているのが印象的だ。



今年度の北米の審査団のアダム・クイントンは「女性起業家は資金調達における無意識の偏見にどう取り組むか」をテーマとしたトークセッションを実施した。

女性が資金調達をする際、女性の人格や志を試すような質問を多くされる状況にあるという課題を提起した。根本的に是正されるべき問題であるが、実際にそんな場面に直面した際、どのように切り返すべきかを互いに議論し合うなど、女性起業家が実践できる具体的なノウハウをシェアしていた。

講演者たちはノウハウを出し惜しまず、一人でも多くの女性起業家に直面するであろう問題への解決策が広がってほしいという願いを感じることができるプログラムであった。

まさに、本年のテーマである、「THE RIPPLE EFFECT(波及効果)」なのではないだろうか。


ミート&ラーンが実施されたスペース


会場には随所で参加者がコミュニケーションを取れる場が設けられていた。

さらに授賞式の舞台となる、600人が収容できる会場に移動し、CWIのために特別に監修されたTEDセッションが実施された。TEDのキュレーションのトップ、ヘレン・ウォルターズの司会で3名の女性スピーカーが登壇した。TEDの持つ、力強い意見とアイデアは想像をかき立て、力を与えるような新しい視点は、参加した女性たちに多くの刺激を与えた。



1人目のスピーカーの地方ソーシャルワーカーのアシュウィータ・シェティはインドの女性の現状についてのトークを行った。「私は誰にも期待されていなかったのです。私はただの貧しいインドの少女でしかなかったのです」

インド南部の貧しい農村で生まれ育った彼女は、教育も満足に受けられず、圧倒的に女性が蔑視されるような環境の中、女性で大学を卒業した最初の世代の一人となった。インドの若きチェンジメーカーの一人として過去に地元メディアでも紹介された。


1人目のスピーカー アシュウィータ・シェティ

そんな彼女がTEDのスピーカーとして舞台に立つのは、まだ十分に知られていない、インドの女性蔑視の現実を世界中の参加者に伝えるには十分で、女性を取り巻く環境をグローバル規模で向上させていきたいという、CWIのメッセージに通ずるものがある。

「私は大学に通い、卒業しました」と彼女が力強く発言すると、会場から大きな拍手が巻き起こった。彼女は自身の経験を元に、若きリーダーたちのエンパワーメントをはかる組織、Bodhi Tree Foundationを創設した。終盤、自身の半生を語った彼女は涙ぐみ、言葉を詰まらせた。

人生は自分で変えることができる、そう語る彼女に、CWIのファイナリストたちにも共通する力強さ、自身の経験や学びから物事に革新を起こしていく、イノベーティブな一面を感じることができた。

2人目の都市景観建築家である、カチャコーン・ボラハムはバンコクの浸水問題について、3人目の微生物学者、カレン・ロイドは地下深層生物圏の微生物の培養を成功させ、それをどのように活かしていくのか、についてのトークを行った。また、アーティストデュオ、クライミング・ポートゥリーのライブトークなどが会場を盛り上げ、授賞式に向け徐々に高揚感が高まっていった。


2人目のスピーカー カチャコーン・ボラハム


3人目のスピーカー カレン・ロイド 


CWIAセレモニーでは受賞者発表に先駆けカルティエCEOのシリル・ヴィニュロン氏や女優のルピタ・ニョンゴ氏らが登壇し、女性起業家のエンパワーメントについてのトークセッションが行われた。



そして会場の熱気は最高潮を迎えつつある中、ファイナリストたち全員のビジネスやパーソナリティなどが紹介される映像が流された。中には舞台に立ち自身の思いの丈を観客全員に届けられるよう力強いプレゼンテーションを行うファイナリストもいた。応募から約9ヵ月にもわたるプログラムを終え、ドレスアップしたファイナリスト達も緊張した面持ちで発表の瞬間を迎える。

受賞者の名前が呼ばれると大きな歓声が上がった。ファイナリストたちと受賞者は抱擁しあい、互いの健闘を称え合った。その様は、彼女たちの間に生まれたシスターフッド(姉妹愛)のような深い絆を表現しているようであった。



また、7人の受賞者のうちの一人で、小規模農業に手頃な融資サービスを提供する、「Grassland Cameroon(グラスランド カメルーン)」のCEOマンカ・アングワフォは、「おばあちゃんがいなければこの仕事を始めていませんでした」と涙ぐみながら語った。彼女の起業の背景には、祖母が小さい農園ながらも作物を育て、カメルーンの農場で働く女性の実情に心を動かされた経緯がある。誰もが周囲の支えなしにはここまでこられなかった。ファイナリストたちにその涙は必然のものとして映ったことだろう。


写真左:マンカ・アングワフォ

受賞者全員の発表後、会場の歓声とスタンディングオベーションは鳴り止まなかった。



その後のアフターパーティーでは、受賞者やファイナリスト達と参加者が交流を深めた。

受賞者の一人、特別支援を必要とする子供や若者に行動療法と教育サポートを提供する学習センター「Maharat Learning Center(マハラ ラーニング センター)」を経営する、ヒバ・シャタ(中東および北アフリカの地域より選出)は興奮冷めやらぬ様子でこう語った。

「とてもうれしく、光栄です。この1週間であらゆる地域の女性起業家たちと知り合うことができました。すばらしい学びの機会でした。そしてCWIが今後も発展し続けて欲しいと思いました」と。


ヒバ・シャタ

CWI選考の流れ
CWIにおける選考からプライズへの流れを紹介しよう。提出したビジネスプランを評価されるだけのコンペティションとは大きく異なる、CWIの特徴がここにある。

また、応募資格が起業1〜5年のシードからスタートアップ期の事業が対象となる。シード、アーリーステージの事業を持つ女性起業家はぜひ一度、エントリーを検討してほしい。
 

1. 1次選考
応募資格は「営利目的であること」「現在収益をあげていること」「1〜5年の始動段階にあること」そして「女性が主導、所有するものであること」の4つ。応募に基づき、7つの地域から上位3名ずつ、合計21名のファイナリストが選出される。
 
2. 1次選考から2次選考まで
ファイナリストたちは経験豊かなビジネスエキスパートのコーチングを受ける。マッキンゼー・アンド・カンパニーとカルティエの経験豊かなシニアレベルのビジネスエキスパート、そしてINSEADの卒業生というコーチたちの指導を経て、プロフェッショナルなビジネスプランの構築とオーラルプレゼンテーションの準備を行う。
 
3. 2次選考から受賞まで
ファイナリストたちは詳細なビジネスプランを提出し、プロジェクトの審査団へのプレゼンテーションを行う。プランのクオリティ、そして口頭でのプレゼンテーションの説得力により審査が行われ、7つの地域から各1名のアワード受賞者が選出される。受賞者ひとりひとりはメンターにより、会社を長期的な成長へ導くための心構えについて1年かけてコーチングを受ける。
 

なお、アワード受賞者7名はそれぞれ賞金10万米ドルと、上記1対1の個別ビジネスコーチングが授与される。なお、受賞者に選ばれなかったファイナリスト14名にも賞金3万米ドルが授与される。
 
この選考における要点は、選出されたファイナリストたちが最終の2次選考までにさらに鍛え上げられていくところにある。

2006年にCWIがスタートしてから、受賞企業の8割が現在も事業を継続しているというデータがあるとおり、育成型のコンペティションであるという理由がここにある。また、このアワードが年々知名度をあげていくにつれ、ファイナリストたちのメディアへの露出も増え、かつカルティエ アワード コミュニティを通じたネットワーク構築の機会を得ることもできる。

北米地域のファイナリストで長期療養中の人々のための、機能的な衣服やアクセサリーを手がける「Mighty Well(マイティ ウェル)」のCEO エミリー・レヴィは、「CWIに参加することで世界中の女性と会うことができました。彼女達と出会うことで、ジェンダーバイアスや、資金調達、マネージングなど、暮らしている場所に関係なく、同じ苦しみを越えてきていることを知ることができました」と語る。


エミリー・レヴィ

また「CWIは賞金を授けるだけのアワードではないと思いました。サポートやネットワーク構築、そして4ヶ月のコーチングやトレーニング、更に1週間の専門教育もあります」とCWIの魅力を話した。

CWI 2020年度のご応募、詳細はこちら

Cartier x Forbes JAPAN Meet-up Event〜initiating a ripple effect〜

そして、CWI 2020 Editonの募集に先駆け、日本でも6月14日、カルティエとForbes JAPANによるコラボレーションイベントが開催される。

女性起業家や今後起業を目指す女性、彼女たちを支援するメンターや投資家を対象に、活躍する女性たちをエンパワーメントする場を提供する。グローバルな視点から、女性起業家のネットワークを広げるイベントだ。

東京で開催するこのイベントには、2019年度のCWIAで発表された受賞者7名の中からチョ・ヨンジョンを、ファイナリストも招聘予定だ。彼女たちがCWIで経験したことや、女性起業家というの生き方を選んだ理由などのセッションを予定している。

イベント当日は、CWIで審査員を務めたForbes JAPAN 編集長の高野真も登壇する。また、カルティエ ジャパン プレジデント&CEOのヴェロニカ・プラット=ヴァン=ティールも来場予定だ。


【イベント詳細】
◎開催日:2019年6月14日(金)
◎開催時間:18:30-21:30(予定)
◎会場:都内某所(ご当選の方へご案内差し上げます)
◎定員:90名程度(抽選)
◎プログラム:下記予定

-Opening Talk
 高野真, Forbes JAPAN編集長
-CWI Talk Session
 CWIA2019の受賞者及びファイナリストによる登壇
-Interactive Session
-Closing Talk
 ヴェロニカ・プラット=ヴァン=ティール,カルティエ ジャパン プレジデント&CEO
-Networking

*セッションは同時通訳が入る予定です。
*軽食を提供予定です。
*当日は取材等により、カメラが入る可能性がございます。お客様が映りこむ可能性もございますので、予めご了承ください。
*駐車場のご用意はございません。公共交通機関をご利用ください。

【参加資格】
・女性起業家、または今後の起業を考えている女性であること
・男性女性関わらず、女性起業家を支援するビジネスに携わっていること

【応募方法】
お申込み締め切り:2019年6月3日(月)17:00まで
6月上旬に抽選結果をメールでお送りします。

※お申し込みは締め切りました。沢山のご応募、誠にありがとうございました。

【登壇者】
●チョ・ヨンジョン
SAY Global(セイ グローバル)CEO



CWI2019の受賞者。定年退職後のシニア層を韓国語チューターとして育成し、世界中の韓国語学習者と繋ぐオンライン語学スクールを運営している。

●高野真
リンクタイズ株式会社 代表取締役会長 兼 Forbes JAPAN編集長



早稲田大学大学院理工学研究科卒業後、大和証券、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、ピムコジャパンリミテッドの取締役社長を約13年間務める。2014年6月に金融から出版に転じ、株式会社アトミックスメディア(現リンクタイズ株式会社)代表取締役CEO兼Forbes JAPAN編集長に就任し、2019年3月より代表取締役会長兼Forbes JAPAN編集長。また2016年10月よりD4V (Design for Ventures, IDEOとの合弁VC)のFounder 兼 CEOを兼務。日本経済新聞の連載に寄稿するなど、資本市場全般に関する論文・著書多数。1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。

【当日来場予定】

●ヴェロニカ・プラット=ヴァン=ティール
カルティエ ジャパン プレジデント&CEO



2000年、カルティエに入社。パリ本社オーガニゼーション部でプロジェクト コーディネーターとなる。リテール&クライアント サービス部のCRM インターナショナル マネジャーや、パリのプランタン百貨店内ブティックのアシスタント マネジャーを経て、ロンドンのカルティエ UKに移り、リテール ディレクターとなる。2014年、カルティエ ジャパン リテール本部長就任。2017年2月よりカルティエ ジャパン プレジデント アンド チーフ エグゼクティブ オフィサー代理とリテール本部長を兼任した後、同年8月にカルティエ ジャパン プレジデント アンド チーフ エグゼクティブ オフィサーに就任。


連載
「Women will change the world」
ー世界規模でビジネスと課題解決を加速させる そんな女性たちを、つなげるー

Story01:本記事|世界中の女性起業家が集うコンペティション「CWI」。彼女達が得たものは、国を超えたネットワーク
Story02:公開中|「CWIA」の夜に放たれた、起業家女性たちの世界へむけた情熱のメッセージ。
Story03:公開中|カルティエCEOに聞く。世界レベルの女性起業家支援CWIの本当の意義、そしてその未来

Promoted by カルティエ / 文=飯村 彩花、青山 鼓、林 亜季 / 写真=© Cartier、Craig Lee

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