「これは業界の誰もが解決案を探し求めている問題だ」と、英国ウェールズのレクサムを拠点とするFrugalpacのマルコム・ウォーCEOはそう指摘する。Frugalpacは今年、24時間稼働する約1700平方メートルの自社工場で、リサイクル可能な紙コップの大量生産を開始した。
一般に流通している紙コップの多くは、液体が漏れないように内側にプラスチック樹脂などのフィルムがラミネートされている。そのため、紙だけでできた製品のようにリサイクルができず、廃棄処分される。PLA(とうもろこしを原料とするポリ乳酸)などの生分解性プラスチック使った製品もあるが、ウォーによると「大部分は埋め立てゴミになっているのが現状」だという。
Frugalpacの紙コップは、これまで分離が難しいとされていた外側の紙とフィルムを分離できるのが売りだ。専用の設備は必要ない。「家庭でもできる。水を張ったシンクやバケツに浸すだけでいい。8分もしないうちに内側が剥がれてくる」とウォーは話す。
フィルム部分も紙もそれぞれ、既存の再生工場でリサイクルできる。フィルムを剥離する過程で必要な水も、従来の紙のリサイクルに使われる水で事足りるため、新たに大量の水を消費することもない。
また、他社製の紙コップの多くがバージンパルプを使っているのに対し、Frugalpacの紙コップは再生紙を使っている点も特徴のひとつだ。消費者は街中や家庭のリサイクル用ゴミ箱に捨てるだけでいい。
現在、Frugalpacが製造する紙コップは、8オンス(227ml)、12オンス(341ml)、16オンス(455ml)の3種類。デザインのカスタマイズも可能だ。ウォーはまず英国内の小規模経営のコーヒーショップと組み、草の根で紙コップの消費習慣を変えていきたいと考えている。
その理由は、小規模ビジネスの方がグローバル展開する大規模チェーンよりも意思決定のスピードが速く、Frugalpacの成長スピードにも合っているからだという。
「(消費者も店も)特別なことは何ひとつしなくてもいい。これは紙コップのリサイクル革命の始まりだ」とウォーは話した。