ビジネス

2019.05.15

蜜月続くアップルとSAP。両CEOが語った「モバイル革命とプライバシー問題」

ティム・クック(左)とビル・マクダーモット(右)。クックはステージに現れると、客席から自分を撮影するスマートフォンを見ながら「iPhoneがたくさん見える。ありがとう。Androidを持っている人は置いていいよ。あとは掃除しておくから」と笑った。



小売りの棚割やフィールドサービスが紙ベースからモバイルに変わる

「業務が簡素化、効率化される。それだけでなく、ビジネスを変革できる」とクック。

法人だけではなく、スポーツの現場でも使われている。最も高速に動くスポーツと言われるホッケーでは、タブレットを使ったコーチングが実現している。NHL(ナショナルホッケーリーグ)の一部チームでは、リアルタイムの試合データを見ながら意思決定しているという。

クックは、「機械学習、ARといった最新の技術、それらをサポートするデバイス、そして移動性は必須になる。最高の情報を最適な人に最適なタイミングで届けることで、ビジネス、スポーツの意思決定を支援できる」と述べた。

アップルとSAPはデスクトップにも裾野を広げ、MacでもiOSアプリのような操作性と生産しに優れたSAPアプリを提供するという。

プライバシーのために立ち上がる

SAPはモバイルでは「Android(アンドロイド)」のグーグルとも提携を結んでいるが、マクダーモットはアップルのシェアだけでなく、操作性、そしてセキュリティを賞賛する。

プライバシーに話が及ぶと、クックは、「今世紀の最大の問題だと考えている」と述べる。「家にあるよりもたくさんの機密情報がスマートフォンに入っており、泥棒に入られるよりもスマートフォンを盗まれる方が被害は大きい。(モバイル端末は)宝石のようなもので、適切に保護しなければならない」と続ける。

Androidとは違ってハードウェアとソフトウェアを統合するのがアップルのアプローチだが、これは「他にはできないセキュリティレベルを実現する」という。「アップルはプライバシーを重視している。だから、居心地が良いとは言えないような状況でも、(ユーザーのプライバシーのために)立ち上がっている」とクックが語るように、アップルは米国政府のロック解除要請を拒否してきた。

クックが「アップルは(消費者のプライバシーに)全力で取り組んでいる。我々のビジネスはプライバシーなしには運用できない」というと、マクダーモットは「誰かの個人的な情報が公開情報にならないというアップルの約束を尊敬している。SAPも顧客のデータを所有しない。顧客のデータの主有権は顧客にある」と述べた。

クックは業界大手がプライバシー保護で一致することは重要だとしながら、「誰かが決めた方向ではなく、我々が望む方向に世界を進めていくことができることに感謝している」と述べた。

文=末岡洋子

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