エンタープライズでもスマホ革命が起きている
SAPが5月7日から3日間、米フロリダ州オーランドで開催した「SAPPHIRE NOW 2019」の基調講演のステージ、クックはマクダーモットに招かれて登場した。
アップルとSAPは2016年に提携し、iOSでネイティブに動く業務アプリケーションを開発するためのSDK(「SAP HANA Cloud Platform SDK」)の提供を進めてきた。マクダーモットによると、SAPのアプリが動くアップルのデバイス(iPhoneとiPad)数は1億台に達しているとのことだ。
「iPhoneの登場によりコンシューマーのモバイルアプリが離陸した。ものすごい勢いだった」とクックは振り返る。「だが、法人分野の潜在性については、誰も気がついていなかった」とし、2社が手を組むに至ったと説明する。「SAPがこの分野でやってきたことを尊敬しており、提携を結ぶことができて光栄だった」とクック。消費者でも法人分野でも一貫していることは、「アップルは人の生活を豊かにすることだ」と強調した。
実は、2社の関係はもっと前に遡る。クックによると1997年〜98年の「アップルが最低だった頃」にSAPを導入して業務プロセスの改革を図ったという。「業務のインフラとしてSAPに頼った。これが重要な触媒になり、企業が好転していった」とクック。
2社は今回、提携を拡大。アップルがiOSで提供するオンデバイス機械学習技術「CORE ML」をSDKでサポートする。これにより、企業は機械学習、IoT、ブロックチェーンなど最新の技術をクラウドで利用できる「SAP Leonardo」を基盤とするiOSアプリを開発できる。機械学習モデルがiPhone/iPadにダウンロードされるため、オフラインでもアプリを実行できるという。最新のSDKは5月後半に公開する予定だ。
これに加えて、SAPの人事クラウド「SAP SuccessFactors」、経費精算の「SAP Concur」向けの「SAP Asset Manager」についても、iOSでネイティブに動作するように再構築した。
CORE MLやARにより何が実現するのか? クックは2つの例を写真とともに紹介した。
1つ目は小売業界における商品の配置だ。これまでなら紙の棚割を使っていたが、AR(拡張現実)とCORE MLを使うことで、iPadのカメラで目の前にある商品棚を移すと、商品が正確に配置されているかをチェックしてくれる。
2つ目は現場の作業員。機器が故障した場合、これまでは紙のマニュアルを見ながら故障の原因を探ったり、修理するしかなかった。それが、iPadに写すだけで故障箇所を指摘したり、修理手順を支持してくれるようになる。故障する前に対応する予測メンテナンスも可能という。