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ティム・クック(左)とビル・マクダーモット(右)。クックはステージに現れると、客席から自分を撮影するスマートフォンを見ながら「iPhoneがたくさん見える。ありがとう。Androidを持っている人は置いていいよ。あとは掃除しておくから」と笑った。

2007年に登場した「iPhone」は人々の生活を大きく変えた。だが、多機能なスマートフォンと移動性の恩恵を受けるのは、消費者だけではない。仕事も変わりつつある。アップルがここで手を組むのは、ERP最大手のSAP。そのSAPが5月に開催した年次カンファレンスで、アップルのティム・クックとSAPのビル・マクダーモット、両CEOが企業におけるモバイルがもたらす変革について語った。

エンタープライズでもスマホ革命が起きている

SAPが5月7日から3日間、米フロリダ州オーランドで開催した「SAPPHIRE NOW 2019」の基調講演のステージ、クックはマクダーモットに招かれて登場した。

アップルとSAPは2016年に提携し、iOSでネイティブに動く業務アプリケーションを開発するためのSDK(「SAP HANA Cloud Platform SDK」)の提供を進めてきた。マクダーモットによると、SAPのアプリが動くアップルのデバイス(iPhoneとiPad)数は1億台に達しているとのことだ。

「iPhoneの登場によりコンシューマーのモバイルアプリが離陸した。ものすごい勢いだった」とクックは振り返る。「だが、法人分野の潜在性については、誰も気がついていなかった」とし、2社が手を組むに至ったと説明する。「SAPがこの分野でやってきたことを尊敬しており、提携を結ぶことができて光栄だった」とクック。消費者でも法人分野でも一貫していることは、「アップルは人の生活を豊かにすることだ」と強調した。

実は、2社の関係はもっと前に遡る。クックによると1997年〜98年の「アップルが最低だった頃」にSAPを導入して業務プロセスの改革を図ったという。「業務のインフラとしてSAPに頼った。これが重要な触媒になり、企業が好転していった」とクック。

2社は今回、提携を拡大。アップルがiOSで提供するオンデバイス機械学習技術「CORE ML」をSDKでサポートする。これにより、企業は機械学習、IoT、ブロックチェーンなど最新の技術をクラウドで利用できる「SAP Leonardo」を基盤とするiOSアプリを開発できる。機械学習モデルがiPhone/iPadにダウンロードされるため、オフラインでもアプリを実行できるという。最新のSDKは5月後半に公開する予定だ。

これに加えて、SAPの人事クラウド「SAP SuccessFactors」、経費精算の「SAP Concur」向けの「SAP Asset Manager」についても、iOSでネイティブに動作するように再構築した。

CORE MLやARにより何が実現するのか? クックは2つの例を写真とともに紹介した。

1つ目は小売業界における商品の配置だ。これまでなら紙の棚割を使っていたが、AR(拡張現実)とCORE MLを使うことで、iPadのカメラで目の前にある商品棚を移すと、商品が正確に配置されているかをチェックしてくれる。

2つ目は現場の作業員。機器が故障した場合、これまでは紙のマニュアルを見ながら故障の原因を探ったり、修理するしかなかった。それが、iPadに写すだけで故障箇所を指摘したり、修理手順を支持してくれるようになる。故障する前に対応する予測メンテナンスも可能という。

文=末岡洋子

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