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AIベンチャー海外進出の「泥臭い」リアル


国内事業も安定していなかったうちに海外進出したわけ

そもそもなぜ、社員数十人のベンチャーが、よちよち歩きの国内事業を抱えながらの時期にシンガポールに進出することにしたのか。

ベンチャーだったABEJAにとって、日本市場の縮小が見えている中、今後爆発的に広がりそうな市場を取りに行くのは不可欠でした。受託中心だった国内事業も自力で開発したサービスが生まれ、会社が潰れる可能性は薄くなりました。

進出先をシンガポールにしたのは、さまざまな条件が合ったためです。まず、AI市場の成長率が高いと見込まれる東南アジアのハブであり、AIへの投資が加速していながら、ABEJAの主力投資分野、ディープラーニング領域の競合相手はまだほとんどいませんでした。

また、AIのモデルに使えるリアルなデータが豊富にある上に、新規の取り組みへの規制が緩く、アジア圏の優秀な人材が集まっている地域でもありました。1、2年ほどで市場が形成されて競合相手が増える前に進出すれば、それだけチャンスを早く獲得できる。ならば早く根を張ろうという狙いもありました。

成長に伴走してくれるパートナーに出会った

すでに海外展開をしている起業家たちにどうやってスタートさせたのか聞いて回り、検討事項のキーポイントとなり得る情報を集める一方、法人設立手続きや会計業務を支援する会計事務所も探していました。

現地法人設立後に必要になってくる連結会計への対応や現地の対応で小回りが効く、柔軟性の高いところがないかを、自分たちで探しました。しかし費用面や業務の範囲で、条件が合うところがなかなか見つかりませんでした。

それでも、自分たちのやり方を理解してくれるところをあきらめずに探していたところ、ある会計事務所につながりました。起業家の一人が「イエスかノーを言うだけで、どんどん話を進めてくれる」と紹介してくれたのです。

実際、この事務所の担当者に自分たちの置かれた状況などを説明しました。すると、乏しい予算や私たちの求めるスピード感などを理解して、通常よりも安い値段で業務を引き受けてくれた上に、月ごとの会計をまとめる際、留意しておく点を先に見出して、指摘してくれるなど、かゆいところに手が届くような対応をしてくれました。

「会社を選ぶだけなら誰でもできる仕事でしょ?」と思われる方もいるかもしれません。ですが、私たちのようなスタートアップにとって、対応が遅く融通が利かない相手だと、命取りになりかねません。

土地勘のない場所でビジネスを立ち上げる際、小さなスタートアップでも、ビジョンを理解したうえでリスクをとってでも成長に伴走してくれるパートナーに出会えたのは幸運でした。信頼関係のある知人の紹介は、いい加減な業者に無駄足を踏むリスクも減り、いいことがあるのだと学びました。

文=夏目萌

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