2年近く前に創業したラッキンコーヒーは、明確な目標を掲げてきた。それは、店舗数でもコーヒーの販売数でも、スタバを破ることだ。
店舗数でスタバを打ち破るため、同社は猛烈なスピードで新たな店を開業してきた。調査会社スタティスタによれば、およそ15時間に1カ所という勢いだ。中国国内の店舗数は今年1月に2000を超え、年末には4500店となる見通しとなっている。スタバは同時期までに、4121店舗に増やす計画だ。
また、ラッキンコーヒーは販売数でスタバを超えるため、テクノロジーを駆使することで業務を合理化し、顧客の好みを分析するなどしてきた。その他に力を入れてきたのは、コーヒーの無料での提供だ。
こうした同社の戦略には、多額の資金が必要となるが、米国での新規株式公開(IPO)を予定している同社には今のところ、資金面での問題はない。ただし、スタバを破るためには、これまでの戦略では十分ではない。
スタバのマーケティング
ラッキンコーヒーに必要なのは、スタバのビジネスモデルと事業戦略を理解することだ。スタバは1990年代、自宅でも職場でもない「第三の場所」と「手の届くぜいたく」という当時拡大していた消費者層(中年になったベビーブーマー世代のプロフェッショナルたち)の間で高まっていたニーズに応え、トレンドに乗ってきた。
そして、以下の3つの側面において、それまでの欧米企業のマーケティングの手法を大きく変化させた。
1. 市場のセグメント化:中~高級コーヒー市場をターゲットに設定。マクドナルドやダンキンとは、早さや便利さではなく快適さや特典の面で競合
2. 実行:おいしいコーヒー、質の高いサービス、くつろげる環境といった点を含め、当初から提供してきた「製品パッケージ」を変わらず重視
3. イノベーション:ブランドへの関心を維持するため、革新的な新商品の提供を継続
ラッキンコーヒーの将来性
株式アナリストらの間では、ラッキンコーヒーの評価額を疑問視する声も聞こえ始めている。
あるアナリストは同社の手元資金について、急激に店舗数を増やしてきたことに加え、無料でのコーヒーの提供、(購入に必要な)アプリの利用者とロイヤルティプログラム加入者の増加を目指した販促活動によって、大幅に減少してきたはずだと指摘。同時に、こうしたやり方は同社の利益率を高めるものではないと述べている。
同社が現在の経営モデルで、採算が取れ、手元資金を増やせる企業になることは難しいという。そのため同社は短期的には、スタバにとっての「とげ」にとどまるとの見方だ。
それでも、同社が価格で競争せざるを得ないという「望まない場所」にスタバを引きずり出す可能性はある。高い利益率に慣れたスタバとその株主にとって、それは悪夢のシナリオだ。