ビジネス

2019.05.17

年間1万人が応募するIDEOが「余白」を大切にする理由

IDEO Tokyoに集うアジアのリーダーシップチーム。


2. 仕事や職場における「遊び」を奨励する

日本のあるプロジェクトで、最先端の食のトレンドをリサーチするために、クライアントをサンフランシスコの街で食べ歩きに連れ出した。すると、一人が「胃が痛い」という。理由を尋ねると、「海外出張で食べ歩きをしているなんて、上司に『何遊んでるんだ』と怒られる」と真剣に悩んでいたのだ。海外出身のデザイナーたちは驚いていたが、日本では珍しいケースではない。

IDEOは、「遊び」は仕事において重要だと考えている。素晴らしいアイデアは、心から楽しいと思っているときに生まれることが多いからだ。アイデアを出そうと緻密に計画して目の前のタスクだけに集中するよりも、アイデアが自然と浮かんでくるような状況、マインドセットを創り出す工夫をした方が、組織のクリエイティビティは高まる。

私たちは、プロジェクト以外の職場の日常においても、何か面白そうなこと、いつもと違うことを試し、インスピレーションを探求することに努めている。社員が自分の特技や興味関心を皆と共有し、一緒に体験する機会を創る「コミュニティ・シェア」も、そうした取り組みの一つだ。

たとえば、月1回ランチタイムに開催する“SASU”(Saturday and Sundayの略。週末のようにリラックスして、クリエイティブになろう、の意) は、毎回異なるお題で1時間、身の回りの小物や廃材を使って、それぞれがちょっとクレイジーな作品を即興で作り、ストーリーを添えて展示する。評価もルールもない。デザイナーではない社員も含め、皆がワイワイ手を動かしながら没頭するイベントだ。


ある日のSASUで作品作りに熱中する社員たち。

ほかにも、「ボードゲームナイト」や「シネマナイト」など様々なイベントが自然発生的にオフィスで行われている。バブルティーにハマったデザイナーがオフィスでバブルティー作りを実験し、集まった同僚たちと「なぜ人気に火がついたのか?」と議論が盛り上がったこともあった。

このようにIDEOでは、皆の好奇心が良い仕事の原動力だと信じ、その赴くままに行動し、共有する余白を残している。そこで得られるインスピレーションや楽観的なマインドセットが、働く意欲やクリエイティビティに貢献するメリットを考えれば、「遊び」も仕事のうちとする価値は十分認めれるはずだ。
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文=IDEO Tokyo

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