ウーバーは2016年8月に、中国の競合「滴滴出行(Didi Chuxing)」に現地の事業を売却し、撤退した。ウーバーは東南アジアにおいても、2018年に現地の競合「Grab」に事業を売却している。いずれのケースにおいても、ウーバーは売却先の株式を取得していた。
ウーバーは遠く離れたアジアよりも、米国で成功を収める確立が高い。米国のテクノロジー企業の大半は、アジアや中国で成功を収めておらず、彼らも例外ではないのだ。イーベイやアマゾンやグーグルらは、中国市場を甘く見すぎた結果、失敗している。
ただし、IPOに関してウーバーは滴滴の先を行くことに成功した。滴滴は2018年に上場が期待されていたが、今ではその話は消え去った。上場を控えた滴滴は、致命的スキャンダルの発生により、その道を絶たれた。
昨年夏に滴滴のドライバーが2人の女性乗客を殺害し、滴滴は問題を起こした乗り合いサービスを閉鎖した。その後、同社はドライバーの顔認証システムの導入や、乗車中の非常通報ボタンの設置、車内の録音などの安全措置を追加した。
これらの措置は滴滴のイメージを向上させたが、同社は政府の規制強化に直面した。中国政府は、配車サービスを行えるドライバーを地元の営業許可を得た者のみに限定し、それにより滴滴は運転手不足にあえぐことになった。
ウーバーは2013年後半に中国進出を開始して以降、現地で10億ドル以上を調達し、サービス地域を60都市に拡大したが年間20億ドルの損失を抱えていた。その後の滴滴への事業売却により、同社は滴滴の株式の約20%を取得した。ウーバーは東南アジアのGrabの株式、27.5%も保有している。
ウーバーは滴滴の事業の成功によるリターンを狙っているが、ここにも懸念が生じている。滴滴は中国の配車市場でトップの地位を占めてはいるが、ここに来て人員削減を進め、組織の再編を行っている。
また、現地の競合との戦いも激化していきそうだ。自動車メーカーの吉利汽車(ジーリー)はドイツのダイムラーと組んで、中国で配車サービスを立ち上げようとしている。また、昨年9月に香港市場に上場した美団点評(Meituan-Dianping)も、既に数都市で配車サービスを始動させている。
米国のテック企業の価値を評価する場合、アジアでの業績を考慮に入れたほうがいいだろう。中国市場への参入を試みた大手テクノロジー企業は多いが、成功を収めた例はほとんどない。