経済・社会

2019.05.12 13:00

米国が対中関税引き上げ、トランプ支持層にも動揺広がる


中国でしか生産されていない商品もある。玩具や家庭用電化製品のように、大半が中国で生産されているものもある。キッチンエイドのミキサーは中国製だ。玩具メーカーのマテルが販売する商品も、ほぼ全てが中国で生産されている。

電子部品など、安い労働力や低い税率、あまり厳しくない規制などのおかげで、関税率が25%に引き上げられてもなお、台湾や韓国より中国のサプライヤーに委託した方が低コストで済む製品もある。

中国で事業を行う米国企業の大半は、関税を課すことに反対だ。だが、関税がなければ中国は今後もその重商主義的な政策を維持し、いずれはアジア地域において米国企業を打ち負かし、米経済を立ち行かなくさせるとみていることは認めている。

トランプが支払う代償

トランプもまた、貿易戦争の代償を支払うことになる。関税率の引き上げによって失われることになる雇用の数は、州によって異なる。だが、米コンサルタント会社トレード・パートナーシップによれば、オハイオ州で約2万9000人、ペンシルベニア州で3万2000人近くが職を失うことになるとみられている。どちらも2016年の大統領選で、トランプが勝利した州だ。

同社のローラ・ボウマン社長によると、全ての中国製品に対する関税率が25%となり、中国が報復措置を講じれば、米国では向こう1~3年の間に200万人以上の雇用が失われることになると予想されている。

国際貿易が専門の法律事務所ミラー&シェバリエの上級顧問、ウエルズ・オアは、両国はいずれも、合意を取り付ける必要があると指摘する。

「トランプが中国との交渉を取りまとめることができれば、状況は大きく変わる。中国は自国の重商主義をより予測可能なものにする必要があることを、認めることになる」

オアによれば、両国が合意に至る可能性は、50%以上だ。米国企業は、中国製品にかかる関税の支払いを避けることができない。これまでに5万社以上が、適用の除外を申請している。そして彼らは今も、救済措置が講じられるのを待っている。

編集=木内涼子

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