拒絶反応やインフルエンザの診断まで 拡大する「AIの目」の応用

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ソウル峨山病院の研究チームが、腎臓移植後に現れる拒絶反応を診断する人工知能(AI)技術を開発したとして話題だ。

腎臓の移植手術を行う際、ドナーと被提供者の臓器の適合性を判断するために、組織適合検査などさまざまな事前検査が行われる。しかしながら、移植後に現れる抗体関連の拒絶反応に関しては完全に予測することは不可能とされている。そのため、術後に拒絶反応が疑われる場合は、患者の腎臓組織を採取し専門医が診断を行う。患者の健康状態を維持するためには、できるだけ迅速な診断および追加の治療が重要だ。

従来の診断の際には専門医が顕微鏡で組織を数百倍に拡大し、肉眼・目視で状態を確認するという方法が採られてきた。採取された組織には毛細血管が非常に多く診断に時間がかかる。しかも、その長時間の診断は医者の疲労の原因となり、診断精度の悪化を招くという状況があったという。

そこで研究チームは、AIに拒絶反応の有無を診断させるための研究を進めてきた。病理組織のスライド約380個を学習させた結果、現時点で専門医が目視で診断した正解データと比較して、約90%の確率で正しい診断を下すことができるようにまで精度が向上したという。しかも、診断にかかる時間も平均で約13分にまで短縮することに成功している。

研究を牽引したソウル峨山病院病理科のコ・ヒョンジョン教授は、AIアルゴリズムで腎臓移植後の拒絶反応をより迅速・正確に診断することができるようになれば、再移植手術や透析の可能性が減り、腎臓移植手術の成功率がさらに高まると説明している。

一方、日本では、AI医療機器ベンチャーのアイリスが、インフルエンザを診断するAI医療機器の開発を進めているとして話題だ。

インフルエンザの患者には、99%の確率で「インフルエンザ濾胞」という腫れ物がのどに生じる。のどにはさまざまな膨らみや他の腫れ物ができることがあるが、そのなかからインフルエンザ濾胞だけを医師が正確に目視で判断するのは非常に難しく経験が必要とされてきた。そこで同社では画像認識技術を応用。綿棒を鼻に入れる痛い検査を写真撮影で代替しようとしている。

これまでガンや認知症などの発見で成果が報告されてきた人工知能。その用途は今、その他のさまざまな病気の診断にまで拡大し始めている。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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