ファッション業界でのリープフロッグ現象があるとすれば、それはメディアの領域だ。スマートフォンを使ってネットにアクセスできれば、インスタグラムなどのSNSで自分たちのブランドを発信できる。伝統的なメディアは限られているが、ネットを介した情報収集と発信に関しては、ナイロビやヨハネスブルグ、ラゴスなどの若者にも少なからず機会が与えられている。
アフリカ化する世界と、グローバル化するアフリカ
「世界はもっとダークになっている」、つまり、有色人種の割合が増えていると持論を展開するのは、ラグジュアリーブランドのコンサル会社Luxe CorpのCEOウチェ・ペザール(Uche Pézard)。彼女はアフリカ系のファッション・ライフスタイルブランドを集結させたプラットフォーム「Luxury Connect Africa」の立ち上げやキュレーションも手がける。
Condé Nast International Luxury Conferenceに登壇したウチェ・ペザール(c)コンデナスト社
ペザールによると、アフリカ大陸に住む人(Afrocontinentals)と世界各国のアフリカ系移民(Afrodiasporans)とアフリカ系の子孫(Afrodescendant)を合計すると、その人口は26億人に上るという。これら3グループは、その消費行動や嗜好が似ている。ブランドがアフリカの消費市場を考える際、世界人口の約3分の1が「アフリカ系」ということは認識されるべきだという。
一方、需要サイドだけでなく、供給サイドとしてのアフリカ系の存在も無視できない。黒人キャスト、スタッフにこだわり、黒人のスーパーヒーローを描いた映画「ブラックパンサー」のヒットは、その片鱗にすぎない。「世界は変化している」とペザールはいう。
ぺザールのプレゼンテーションより抜粋。(c)Uche Pézard
アフリカ系が自身の文化やルーツであるアフリカ中心的な(Afrocentric)文化を世界に発信し、文化的にも世界がアフリカ化されつつある。同時に、アフロ・フューチャリズム(Afrofuturism、アフリカ視点の未来構想主義)のようなアフリカ視点の考え方、言葉、価値観が生まれ、広まりつつある。
ペザールが手がける「Luxury Connect Africa」は、アフリカ発のラグジュアリーブランドをセレクトし、オペレーションや市場開拓などの支援を行うプラットフォームだ。昨年は、9つのファッション、ジュエリー、美容ブランドが参加する、パリでの合同展示会を開催した。
「アフリカ発のラグジュアリーブランドをつくる。そのためには個別のデザイナーへの投資ではなく、ブランドに対する投資が必要。初期段階の業界だからこそプラットフォームに投資しています」とペザールは言う。